2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on Anderson Localization and Quantum Level Statistics in QCD under Extreme Conditions
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17K05416
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
望月 真祐 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (00362913)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ランダム行列 / 格子ゲージ理論 / 有限温度QCD / ヤーノシ密度 / トレイシー-ウィダム / SU(N)固有値密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題である有限温度での格子QCDの最近の進展により、ポリヤコフライン(虚時間方向のゲージ場のホロノミー)の固有値分布関数が系の諸相(閉じ込め相、クォークグルーオンプラズマ相、およびそれらの中間的な部分的閉じ込め相)を区別するオーダーパラメータになっていることが理解されてきた。このポリヤコフラインは(半単純群ではなく)単純群ないしアーベル群に対して定義されるが、ハール分布するSU(N)の固有値密度は(ハール分布するU(N)(円形ユニタリーランダム行列集団)の場合と対照的に)数値的な予想式が知られているのみであった。私はPTEP 2024, 021A02において、セルバーグ積分を用いることによってハール分布するSU(N)の固有値密度を導出して前述の予想式を証明するとともに、他の2つの対称性クラス(剰余類SU(N)/SO(N)およびSU(2N)/Sp(2N)からSU群へのカルタン埋め込み)に対する固有値密度を初めて導出した。この成果は、拘束付きランダム行列の理論における一つの進展である。
また私は、2016年に出版した単著の書籍「ランダム行列とゲージ理論」を増補した電子版を出版した。追加の章として増補された内容は、私が本基盤研究を通じて得た、QCDディラック演算子の量子準位統計におけるヤーノシ密度の顕れに関する新規な知見(有質量カイラルランダム行列の固有値相関関数、順序付き固有値の連結分布のトレイシー-ウィダム法による導出)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼに研究計画に準拠して、ランダム行列理論側の解析的計算と格子ゲージ模型の数値計算との比較・検証を並行して展開しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究期間を通じて私は, 種々の積分核Kに対して上述のような新規な準位統計分布を導出し, それらに対応する物理系および解析数論的対象と比較して検証することを目的とする. 具体的には: (1) 可積分型積分核への拡張 (2) 数論的カオスにおける零点の連結分布への適用 (3) 動的クォークを含む有限密度2カラーQCDにおける低エネルギー定数の精密決定 (4) 局所的準位統計分布(r比の分布関数など)の解析的導出 の主題に取り組む.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症のため、2020~23年度の4年間にわたって海外および国内学会に出張しての発表機会がなく、当初予定していた2年分の旅費を飛翔しな かったため次年度使用額が生じた。この残余額は、感染症に伴う規制の緩和に伴って今年度に予期されている国内学会等の旅費、および計算機の更新に充てる予定であ る。
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