2017 Fiscal Year Research-status Report
Lepton Number of Cosmic Background Neutrinos and Generation Mechanism of Particle Number in the Universe
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17K05418
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
両角 卓也 広島大学, 理学研究科, 准教授 (20253049)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 背景ニュートリノ / 粒子数反粒子数非対称性 / フレーバー混合 / 粒子反粒子混合 / マヨラナニュートリノ / 標準模型を超える理論 / 非平衡の場の量子論 / 密度行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「背景ニュートリノの初期条件と非平衡場の量子論に基づく背景ニュートリノのダイナミクスの定式化」に関して研究した。具体的な研究成果は以下のとうりである。 (1)背景ニュートリノのレプトン数非対称性を生じうる標準模型を超える理論として離散的対称性をもつシーソー模型を研究した。この離散的対称性を持つ模型では、異なる縮退した真空が存在するので、これらの真空が現象論的に区別できるかを調べた。特にマヨラナニュートリノの持つ3つのCP対称性の破れを計算し、これらに敏感な物理量、ニュートリノ振動のCP対称性の破れ、ニュートリノレス2重ベータ崩壊確率を予言し、異なる真空の現象論的な違いを明らかにした。 (2)背景ニュートリノの担うレプトン数の期待値の時間発展を密度行列を用いて研究した。この方法で、2世代ニュートリノに関するニュートリノ振動の式を導出できることを確認した。また密度行列の初期条件をいつ、どのように設定するかを検討した。その結果、軽元素合成時に初期条件をおくのが適当であるとわかった。 (3)非平衡の場の理論のモデルを用いた粒子数非対称性の生成の研究 ニュートリノに研究対象を限定せずに、粒子数を保存しない場の理論のモデルを用いて粒子数非対称性の生成機構を研究した。特に複素スカラー場と中性スカラー場の相互作用によって、粒子数生成をするモデルを提案した。複素スカラー場の電荷を粒子数と同定した。粒子数の非対称度が零であるような初期条件から出発し、時間の経過とともに有限の非対称度が生成されることを確認した。十分な時間が経過すると非対称度は振動することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目において、本研究課題を遂行するための技術的な点に関して先行研究を基に十分な調査研究ができた。このために今後の研究を遂行するための基盤が整った。また、二年目に予定していた本研究課題に関連する国際ワ―クショップ(PPAP2018)を一年目に前倒しで開催できた。この会議に招へいした研究者から、講演等を通じて、本研究課題に関する技術的な示唆や情報提供を直接受けることができた。このほかに、粒子数生成に密接に関係するニュートリノの質量模型など、標準模型を超える素粒子模型の研究を論文としてまとめることができた。以上のことから研究はおおむね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の準備は一年目にできたので、二年目以後の研究計画に基づいて「背景ニュートリノの担うレプトン数の時間発展」に関する研究を進めていく。 二年目以降の課題と方策: 一年目では相対論的エネルギーをもつニュートリノのレプトン数非対称度の時間発展を主に研究した。二年目以降では温度がニュートリノの静止質量と同程度かそれより低い場合を研究する。このような場合には、非相対論的なニュートリノの担うレプトン数の時間変化を研究することが必要になる。これに関して、マヨラナニュートリノの真空中でのニュートリノ反ニュートリノの振動公式が先行研究で導かれている。この研究を参考に、一年目に研究した密度行列の方法を用いて、レプトン数の時間変化を記述する微分方程式を導く。まず、相互作用のない真空中の場合を研究し、次にニュートリノの電磁気モーメントなどの相互作用の効果を取り入れた方程式を導く。微分方程式を数値的に解くためのプログラムをMathematicaを用いて数値計算のコードを整備する。他の研究者との情報交換を促進するため、国際ワークショップ Phenomenology of Particle and Anti-Particle (PPAP)の第2回を開催する。これによって共同研究のネットワークを拡大する.
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