2019 Fiscal Year Research-status Report
Lepton Number of Cosmic Background Neutrinos and Generation Mechanism of Particle Number in the Universe
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17K05418
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
両角 卓也 広島大学, 理学研究科, 准教授 (20253049)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 背景ニュートリノ / マヨラナニュートリノ / レプトン数 / 時間発展 / シーソー模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には背景ニュートリノがマヨラナ粒子であった場合を想定した研究を行った。現在宇宙に満ちている背景ニュートリノは宇宙初期において弱い相互作用から脱離し、その後に宇宙膨張でエネルギーを失うことにより 温度にして2ケルビン程度になっているという理論予想がある。この予想は質量がゼロの場合の予測である。質量をもっていたとしても宇宙膨張によってニュートリノの運動エネルギーが小さくなっていることは間違いないと考えられる。このような温度の低い背景ニュートリノの存在を念頭に本研究課題では、ニュートリノがその静止質量と同程度かそれより小さい運動量を持つ場合にニュートリノが担うレプトンファミリー数がどのように時間変化するかを研究した。ニュートリノは生成されるときにレプトンフレーバーの固有状態, すなわち電子、ミューオン、タウニュートリノまたはその反粒子状態状態で作られる。決まったレプトンファミリー数を持つニュートリノの状態を始状態に選んだ時, その後の時間発展で各レプトンファミリー数がどのように時間発展していくかを調べた。ニュートリノが相対論的な時は,レプトン数の符号は時間発展によって変化せず,ニュートリノ振動での研究で用いられている振動確率の式に帰着する。一方ニュートリノの運動エネルギーが静止エネルギーと同程度かそれより小さい場合にはレプトンファミリー数の期待値は時間とともに正負両方の値をとることがわかった。期待値の値はニュートリノ振動確率とは異なり,ニュートリノの絶対質量やマヨラナ位相の値にもよることがわかった。このほかにニュートリノの質量階層性(正常階層か逆階層か)にも期待値の値は依存することを示した。結果を2つの国際会議と2つの国内会議で発表し,アーカイブにも投稿した(arXiv:2004.07664)。ニュートリノシーソー模型の研究が雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
背景ニュートリノがマヨラナ質量を獲得した時のレプトン数の時間発展の計算ができた。 このことによって最初の課題が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は背景ニュートリノが生成されたときの初期条件の下でのレプトンファミリー数の時間発展や、ニュートリノの持つ磁気モーメントや宇宙膨張の効果を取り入れた研究を行う。 またマヨラナニュートリノの場合とディラックニュートリノの時とでどのような相違が出るのかについての研究も行う。 投稿中の論文で得た結果によるとマヨラナニュートリノの場合において運動量が小さい時にレプトン数が1のニュートリノの初期状態から始めて非常に大きなレプトン数が得られる場合があった。この研究ではハイゼンベルク表示でレプトン数の期待値を求めているため,時刻tでの状態(波動関数)がどのようになっているかわからない。この結果をシュレディンガー描像で考察するとどのようになるのかに関しても研究したい。
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Causes of Carryover |
学会発表で使用を予定していた旅費が3月の物理学会中止のため必要がなくなった。また,計画していた研究会の開催を見送ったため,招聘旅費が必要なくなったため。これらは, 次年度の旅費(学会,研究会参加および招聘旅費)と書籍の購入,研究協力者への謝金等に使用する。
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