2017 Fiscal Year Research-status Report
微細導波路を用いた低次元電子系の異方的伝導率・局所熱起電力マッピング法の開拓
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17K05491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 彰 東京大学, 物性研究所, 助教 (20260515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子ホール効果 / コプレーナ型導波路 / マイクロ波 / エッジ・マグネトプラズモン / 2次元電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
コプレーナ型導波路を用いたマイクロ波吸収率測定を、量子ホールエッジ状態の研究に適用した。コプレーナ型導波路の中心電極へバイアス・ティーを経由して負バイアスを印加するという独自の手法で、測定感度の高いコプレーナ型導波路スロット部へ2次元電子系の試料端を導入した。ランダウ準位充填率2から18までの整数量子ホールプラトー領域にて、試料端付近にのみ存在する1次元的エッジ状態電子系の、磁場中でのプラズマ励起であるエッジ・マグネトプラズモンの観測に成功した。この励起は、マイクロ波吸により生じる温度勾配に起因する熱起電力にても、吸収率よりむしろ高感度で観測出来ることを明らかにした。負バイアスの値により試料端の位置、閉じ込めポテンシャル形状を変化させ、それに伴うエッジ・マグネトプラズモン励起周波数の変化を観測した。試料端付近での電子濃度のバイアス依存性を静電的計算により求めることにより、励起周波数のバイアスおよび磁場依存性を定量的に説明することに成功した。周波数の変化は主として、コプレーナ型導波路中心電極とエッジ状態との間の距離の変化による静電的結合の変化に起因するものであることを明らかにした。この研究で用いたコプレーナ型導波路はmmサイズのマクロな大きさのものであるが、バイアス電圧による、試料端の位置のわずか数nmの変化を敏感に捉えることが出来ることが明らかになった。またこの研究の過程で、電子濃度が無くなる試料端のみならず、電子濃度が異なる2領域の境界にもエッジ・マグネトプラズモンが励起されることを、初めて実験的に明らかにすることが出来た。現在は、コプレーナ型導波路の小型化、および、ピエゾコントローラを使った試料とコプレーナ型導波路の相対位置を変化させるための準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究申請時にはコプレーナ型導波路とは別個のサイドゲートを用い、試料端位置とコプレーナ型導波路との相対位置を変化させることを考えていたが、その後に着想したコプレーナ型導波路中心電極そのものをゲート電極として用いる手法で、当初の目的と同等の結果が得られることを明らかにした。その検証に尽力したため、コプレーナ型導波路の小型化への取り組みがやや遅れてしまったが、全体としておおむね順調に研究が推移しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
電子ビーム微細加工技術を用い、コプレーナ型導波路の小型化に取り組む。十分な信号が得られる範囲で、どのくらい小さくすることか可能か、見極める。コプレーナ型導波路は試料表面に直接作製するタイプ、および、他の絶縁体上に作製し試料表面に押しつけるタイプの両方に取り組む。後者を用い、ピエゾコントローラで試料とコプレーナ型導波路の相対位置を変化させる装置を作製し、まずは室温にて、2次元電子系が表面に露出しているSiC上エピタクシャル・グラフェン試料を用いて、位置に依存したマイクロ波吸収率、高周波伝導率の測定を行うことを試みる。
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Causes of Carryover |
外国旅費の増額に伴う研究計画変更により、申請時に初年度購入を計画していたピエゾステージは次年度購入する。
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