2018 Fiscal Year Research-status Report
原子間の結合に着目したX線吸収分光法による鉄合金の熱膨張抑制機構の解明
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17K05518
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石松 直樹 広島大学, 理学研究科, 助教 (70343291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インバー効果 / 元素選択的な体積弾性率 / 圧力下EXAFS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はX線吸収分光によりボンド長と結合ポテンシャルの圧力変化を元素選択的に決定することで,Fe-Ni合金での熱膨張が抑制される機構の解明を目的とする.H30年度は,放射光施設SPring-8の実験課題が無事採択され,Fe-Niインバー合金,および負の熱膨張を示すFe-Pt合金の低温圧力下でのEXAFS測定を行った.実験はBL39XUで行った.それぞれの試料について強磁性相の圧力領域と加圧により常磁性相となる圧力領域におけるEXAFSの温度変化を測定した.EXAFS測定に成功し,精度のよいEXAFS振動のデータをFeK端,NiK端,PtL3端で取得することができた.現在,Fe周り,Ni周りおよびPt周りのボンド長やデバイワラー因子について,強磁性相と常磁性層における温度変化を解析中である.なお,H29年度から続けていた室温データの解析結果からは,常圧ではFe周りのボンド長がNiより長く,さらに体積弾性率もNi周りより小さい値が見出された.現在,この成果を第一報として論文を執筆中である.さらに,この局所構造の違いを,3次元的なFeとNiのネットワーク構造で説明するために,逆モンテカルロシミュレーションによるデータ解析を並行して進めている.またH30年度は,この課題で得られた成果を国内学会や国際会議で8件発表している.代表者の石松は,本内容について第32回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムで招待講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度に行ったSPring-8での実験では,低温実験の難しさから圧力点については必要最小限のデータしか得られなかったが,それらのEXAFSプロファイルは精度よく測定できている.低温のデータについては,現在,精力的に解析を進めている.またH29年度に測定した室温データについては,現在,その解析結果を論文にまとめていおり,第一報として国際高圧専門誌の「High pressure Research」に投稿の予定である.このため概ね計画通りに進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はこれまでの成果発信に努める.「現在までの進捗状況」で記述したように室温での元素選択的な局所構造の違いを論文にまとめている.また,Fe周り,Ni周りの局所構造の違いを,3次元的に可視化するために逆モンテカルロシミュレーションの解析を進める.EXAFSの圧力変化では,試料が常磁性相となった圧力領域においても,圧縮曲線に異常が見られている.その圧力領域での磁気状態を明らかにするためにX線磁気円二色性の測定を行う予定である.
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Causes of Carryover |
現有設備で研究が円滑に進行したために,次年度使用額が発生した.次年度は,主に成果公表のために経費を有効に活用する計画である
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