2017 Fiscal Year Research-status Report
Ultrasonic Investigation of Uranium Compounds without Local Inversion Symmetry
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17K05525
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柳澤 達也 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10456353)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強相間電子系 / 物性実験 / 低温物性 / 磁性 / 超音波 / 多極子 / マルチフェロイクス |
Outline of Annual Research Achievements |
大局的な反転対称性を持たない「環状磁気構造」と,局所的な反転対称性を持たない「カゴ状結晶構造」にウランを内包する化合物について、超音波測定によって「奇パリティ多極子」の影響が現れるかどうかを検証するのが本研究の眼目である。 UNi4Bの弾性定数C66, C44モードについて100 mAまでの電流下において電流下超音波測定を行ったが、発熱による影響以外の電流誘起現象は測定精度内で観測されなかった。発熱を抑えるために、超流動ヘリウムに測定プローブを浸けた状況においても検証を行ったが、10-5の精度で電流印加の有無による差は生じないことがわかった。 一方、横波モードC66の,常磁性相および秩序相内の両方において現れるソフト化は,過去に提案されている結晶場模型に基づく四極子感受率では説明できず, その起源がそもそも判っていない。そこで、これまで測定されていなかった極低温領域(1 K~40 mK)における弾性定数C66の測定を東北大学金属材料研究所とドレスデン強磁場研究所において行った。その結果, 常磁性状態から続くソフト化はT* ~330 mK 付近でゆるやかに停止し,一定値に収束する振る舞いを観測した.これは,U4+ (5f 2: J = 4)の電子状態が存在しており,横波超音波モードC66が結晶内に誘起する格子歪みεxy(或いは回転ωxy)と結合する電気四極子の自由度を本系が有することを示している.本研究から新たな結晶場モデルを提案した。強磁場下での超音波測定にも成功し、極低温(T > 30 mK)・強磁場領域(H < 60 T)まで拡張した磁場-温度相図が完成した。超音波実験から、本系の複雑な磁気相図の背景に四極子が少なからず影響していることを示唆する結果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UNi4Bの電流下超音波測定を繰り返し、現状の電流値、および測定精度内では電流誘起現象は観測されないことが明らかとなった。一方、SQUID 素子を用いた磁化測定では微弱ながらも明確な電流誘起磁化が検出されているため、今後は超音波測定の精度を高めていく必要がある。 一方、本系の極低温・強磁場領域での超音波測定を行うことで、結晶場基底状態に対する新しいモデルを提案することができた。特に、本系の結晶対称性が直方晶であり、1/3のUが反強磁性相内でも常磁性を保っていることがマクロ測定の超音波測定の観点からも確認できたことは特筆すべき成果である。 本研究と並行して遂行している「国際共同研究加速基金」による海外研究施設での滞在中に、Uを含むカゴ状化合物の育成にも着手している。現状では超音波測定に適したサイズの結晶は得られていないが、そのノウハウを国内に持ち帰り、北海道大学でU化合物の結晶育成に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
UNi4Bの微弱な電流誘起現象を超音波で観測するため、超音波測定の精度を高める方策について、具体的には、温度調整を高精度で行うことができるカンタムデザイン社のPPMSと超音波位相比較法を組み合わせ、単結晶試料の断面積を減らして電流密度を向上させ、熱アンカー等を適切にとる、等の考えうる方策を全て施し、発熱を抑えた精度の高い測定で再挑戦する。 上記にかんして、当初計画ではVTI温度可変インサートを新たに購入する計画であったが、ヘリウム再液化装置と14T超伝導磁石を装備したカンダムデザイン社PPMSを北海道大学の先端物性ユニットで共同利用し、超音波システムに転用して用いる方針に切り替えた。そのために専用のマルチファンクションプローブを購入し、改造を施した。既にテスト測定を終え、改めて電流下測定を行う準備は整っている。 カゴ状化合物ThBe13, LuBe13の育成に関しては、両物質で超伝導を発見しているチェコ共和国のカレル大学が既にノウハウを有しているため、国際共同研究で試料育成する計画である。 SAW素子の開発は引き続き行っているが、漏洩電磁波によって信号が乱れる問題がわかっており、漏洩電磁波を遮蔽する専用の金属製サンプルセルを設計・制作する必要がある。
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Causes of Carryover |
当初はVTI温度可変インサート(ヘリウム4冷凍機)(150万円)を新たに購入する計画であったが、本学保有の研究機器を譲渡してもらい、長年使用されていない中古のVTI温度可変インサートと12 T超伝導磁石を入手できたため、翌年度分の助成金とあわせて中古装置の再立ち上げに必要な物品(真空配管部品等)を購入する予定である。その間の代替措置として、北海道大学の先端物性ユニットで共同利用が可能なヘリウム再液化装置と14T超伝導磁石を装備したカンダムデザイン社PPMSを超音波システムに転用して用いるため、専用のマルチファンクションプローブ(49万円)を購入した。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] UNi4Bの極低温・強磁場における超音波弾性応答2018
Author(s)
柳澤達也, 齋藤開, 日高宏之, 網塚浩, 中村慎太郎, 淡路智, Denis Gorbunov, Sergei Zherlitsyn, Jochen Wosnitza, Klara Uhliova, Michal Valiska, Vladimir Sechovsky
Organizer
日本物理学会 第73回年次大会
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