2018 Fiscal Year Research-status Report
Search for massive Dirac phase by NMR in an extended pressure region
Project/Area Number |
17K05532
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90302760)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ディラック電子系 / 有機導体 / 電気抵抗 / 単一成分分子性導体 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の結果をふまえ、有機導体a-(BEDT-TTF)2I3塩のディラック電子相が発現する圧力領域において電気抵抗の磁場依存性を中心にポスドク研究者らと共に測定した。ディラック電子系では磁場の伝導面垂直成分が存在するとランダウゼロモードとよばれる特異な状態が形成される。一方で伝導面に対して平行磁場の条件ではこのゼロモードは形成されない。このとき磁場によってスピンの上下に対応して準位分裂が起こる。この際、電子とホールの小さなフェルミ面が形成されるが、これが強い相関によって対を作り、ギャップを開けるエキシトニック絶縁体状態が実現している可能性がある。 これを調べるため、磁場中で圧力セルを回転可能な機構をプローブに組み込み、磁場の方向を正確に制御し、磁場を伝導面平行に印加した状況で伝導面内の電気抵抗の測定を行った。擬二次元伝導体であるため、単純な4端子測定では測定量に伝導面間と伝導面内の成分が交じり合うことが期待される。これでは、磁場によって抵抗が変化した場合、どちらの成分によるものかといった議論が難しい。そこで、端子配置や端子数を増やし、さらにポアソン方程式を解くなどして面間、面内成分の分離を図った。 この結果、比較的弱い抵抗の磁場依存性が観測された。この振舞いの説明の一つとして、移動度の磁場による抑制が考えれらる。その原因の一つとしてNMR測定で指摘した、エキシトニック絶縁体状態への揺らぎが考えられる。 さらに、常圧においてディラック電子系が期待される単一成分分子性導体Pt(dmit)2塩の4端子抵抗測定を試みた。試料が極微小のため、残念ながら途中で4端子測定ができなくなったが2端子測定での抵抗の温度依存性は温度に対して弱いものであり、ディラック電子系と矛盾しない結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マッシブ相の探索を行うため、a-(BEDT-TTF)2I3の抵抗測定では磁場領域をNMR測定時のそれよりも拡張して行っている。加えて、圧力セルを磁場中で回転できる機構も用意したことによって、磁場とディラック電子系を形成する伝導面の角度制御の精度を格段にあげた状態で測定が可能となった。さらに、単一成分分子性導体の測定を開始し、ディラック電子系の物性探索の領域を拡大するなど、研究は、新らたな側面を捉えながら概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる本年はより強磁場、極低温域での測定を行う。これにより、NMRの緩和率などに見えている単なるディラックコーンでは説明が困難な低温での増大などの起源を探る。加えて、学会などで同物質や近い電子系を研究する研究者との議論を重ね、マッシブ相の探索を行う。 前年度の測定を開始した単一成分分性導体に関してはNMR測定を行い、磁性の観点からディラック電子系の実現の有無を検討する。
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