2019 Fiscal Year Annual Research Report
Search for massive Dirac phase by NMR in an extended pressure region
Project/Area Number |
17K05532
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90302760)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ディラック電子系 / 有機導体 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度にあたる本年は、ディラック電子系に関連した二つのNMR測定を行った。一つは単一成分分子性導体Pt(tmdt)2である。この物質はバンド計算によれば常圧においてディラック電子系が形成されるといわれる物質である。有機導体におけるディラック電子系は従来、加圧が必要なものが多かったが、常圧で実現されれば測定の幅がより広がることになる。 もう一つはa-(BETS)2I3塩である。これは加圧下でディラック電子系が出現するa-(BEDT-TTF)2I3塩と同系であり、BEDT-TTF分子の内側の硫黄原子をセレンに置換した分子(BETS)を用いた塩である。常圧において、金属-絶縁体転移を起こし、これはa-(BEDT-TTF)2I3と同じ電荷秩序形成によるものと考えられてきた。しかし、近年、X線の構造解析により、絶縁体状態において、a-(BEDT-TTF)2I3のような結晶構造の対称性の破れが起こっていないことが指摘され、その絶縁化のメカニズムに興味がもたれている。 Pt(tmdt)2塩における13C NMR測定の結果、室温付近から1/T1、シフトともに温度の低下に対して温度のべき乗則で減少していく振る舞いが観測された。この温度依存性は定性的には、ディラックコーンとノーダルディラックラインによる有限の状態密度の存在によって説明可能である。一方で定量的な部分はまだ不十分であり、今後、磁場依存性などの測定が必要となる。a-(BETS)2I3の13C NMRは以前に報告されているが、今回はより詳細に温度依存性や磁場の印加方向依存性を測定した。室温からシフトなどが急激に減少するが、絶縁化が起こる温度以下でもa-(BEDT-TTF)2I3で見られたような分子サイトの対称性の破れは観測されていない。絶縁化のひとつの可能性として、Se置換によるスピン軌道相互作用の増加によるトポロジカル絶縁体が挙げられる。
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