2017 Fiscal Year Research-status Report
Search for superconducting hydrogen compounds by integration approach of computational and data sciences
Project/Area Number |
17K05541
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石河 孝洋 大阪大学, 基礎工学研究科, その他 (40423082)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 遺伝的アルゴリズム / 遺伝的プログラミング / 機械学習 / 水素化合物 / 結晶構造 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、データ科学的手法の部分について開発を実施し、高温超伝導を示す新奇水素化合物を探索するための基盤構築に取り組んだ。 遺伝的アルゴリズムを用いた結晶構造予測法及び第一原理電子状態計算手法を用いて酸素-水素系、アルゴン-水素系、硫黄-酸素-水素系における高圧安定相と超伝導相を探索し、得られた結果をデータベースに追加した。アルゴン-水素系では、1500万気圧付近まで圧縮するとアルゴン格子間に存在する水素分子が解離して超伝導性が急激に強まり、ArH2やArH4で70ケルビンの超伝導になることを予測し、論文で発表した。また、他の研究グループによって既に報告されている23種類の2元系水素化合物に関する構造データ、超伝導データもデータベースに加えた。 次に、機械学習に利用する遺伝的プログラミングコードの修正を行い、更新したデータベースを使ってターゲット物質の選定を実行した。圧力、空間群、原子量、水素含有量、電子間クーロン斥力パラメータμ*の5変数と四則演算子を使用して、機械学習によって超伝導転移温度と相関の強い関数(超伝導評価関数)を作成した。プログラムを使って網羅的に作成した3元系水素化物のデータリスト(空間群は三斜晶(No. 1)、圧力は100万気圧、μ*は0.13に固定)を超伝導評価関数に照合させたところ、H4FP、H5C4Mo2などの化合物が高温超伝導の候補として帰納的に選出された。これらの物質について第一原理的に検証を行った結果、H4FPについては直方晶Cmc21構造をとる300万気圧において27ケルビンの超伝導に、またH5C4Mo2については単斜晶Pm構造をとる20-50万気圧において15ケルビンの超伝導になることが理論的に明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、物質探索のための基盤構築を行い、候補物質の選定と計算科学的手法による検証の段階に到達し、当初に予定していたところまで研究を進めることができた。その一方で、選定された物質は期待に反していずれも高温超伝導とはならなかったため、今後は探索方法の見直しや改良が必要となる。これらを踏まえて、研究はおおむね順調に進んでいると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究成果によって新たな超伝導水素化合物を見つけ出すことに成功したが、依然として硫化水素に匹敵するような高温超伝導の発見には至っていない。そのため平成30年度は超伝導評価関数の予測精度を更に高めるように探索方法の改良を行い、候補物質の再探索に取り組む計画である。 高温超伝導物質がうまく得られなかったことについて、機械学習で評価関数を作成する際に過学習に陥ってしまい、未知の物質に対する予測性能が著しく低下したことがその主な原因と考えられる。そこで、全データの90%を訓練データ(trn)、10%をテストデータ(tst)として交差検証を実行することで予測性能の優れた評価関数を作成するようにシステムを修正する。遺伝的プログラミングで作成した評価関数の各変数にデータベース内のデータを代入して得られた値と第一原理計算から得られた超伝導転移温度との間の相関係数の絶対値をXとすると、X´ = Xtrn + Xtst - |Xtrn-Xtst|の平均値が最大となる関数を最も優れた超伝導評価関数とし、これを使ってターゲット物質の選定を行う。
|
Causes of Carryover |
物品費が当初の予定をオーバーしたため、旅費を少なく抑えるように努めた結果、残額が生じた。次年度分と合わせて、計算機の部品購入や旅費に使用する計画である。
|
Research Products
(15 results)