2017 Fiscal Year Research-status Report
Phase diagram, electronic structure, and superconductivity of iron-based superconductors
Project/Area Number |
17K05556
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺嶋 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (40343834)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / フェルミ面 / 量子振動 / ディラック電子 / ベリー位相 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年に東工大・細野教授らの報告した鉄系超伝導体は、発見からわずか1年で超伝導転移温度が30度も上昇したため、高温超伝導体の有力な候補物質として注目され、より高い転移温度を実現するために、超伝導発現の機構解明が進められている。 超伝導研究では、母物質の一部の元素を置換して新たな超伝導体の探索が行われるため、超伝導発現機構の解明には、母物質の電子状態の解明が重要だが、鉄系超伝導体で最も高い超伝導転移温度である絶対温度56度を示す1111型と呼ばれる鉄系超伝導体の母物質については、不純物や欠陥の少ない高品質な試料の作製が難しく、電子状態の実験的解明が進んでいなかった。 H29年度我々は、1111型鉄系超伝導体の母物質である「CaFeAsF」について、電子状態の最も重要な指標である「フェルミ面」を完全に決定した。具体的には、フラックス法により合成された高品質CaFeAsF単結晶を使い、20テスラ超伝導磁石、45テスラハイブリッド磁石を用いて、超低温、強磁場中で量子振動を測定することによりフェルミ面を実験的に観測し、バンド計算と比較した。 フェルミ面は電子的およびホール的の2種類の円筒状フェルミ面からなることが明らかになった。電気伝導を担うキャリア数が特異に少なく、鉄系超伝導体のバンドのトポロジカルな性質から反強磁性ギャップは必ずノードを持つとする予測(ノーダルSDW)と良く整合する。さらに、量子振動の詳細な解析により、電子的なフェルミ面が、不純物の影響を受けにくく固体中を高速で移動する「ディラック電子」と呼ばれる特別なタイプの電子によるものであることを明らかにした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の様にCaFeAsFについて、1111型鉄系超伝導体母物質としては初めてフェルミ面を実験的に決定することに成功している。本成果は既に論文発表を行った。更に、11型鉄系超伝導体FeSについてもフェルミ面を決定するに十分な量子振動データを既に取得しており現在解析中である。従って順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
11型鉄系超伝導体FeSについて既に得られた量子振動データを解析し、フェルミ面を明らかにする。 1111型鉄系超伝導体母物質CaFeAsFについては、ドープ,圧力による電子状態の変化を検証する。
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Causes of Carryover |
CaFeAsF, FeSとも十分な量子振動データが得られたため、米国国立強磁場研究所での出張実験1回を中止したため、次年度使用額が生じた。 次年度助成金とあわせて、旅費及び消耗品等の購入に適切に用いる。
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Research Products
(8 results)