2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the internal structure of the lava dome in Showa Shinzan, Usu volcano, japan, from seismic, gravimetric, and muographic observations
Project/Area Number |
17K05625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 陽介 東京大学, 地震研究所, 助教 (90376624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10345176)
青山 裕 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30333595)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 溶岩ドーム / 地震波干渉法 / 微動 / 合成開口レーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定通り、有珠山昭和新山における地震観測を2018年5月に行った。現在地震波干渉法により溶岩ドーム内部の地震波速度構造を解析中であるが、初期的な解析では、1943-1945年噴火の際に貫入したと思われる溶岩が冷え固まったものと思われる高速度領域が地表近くにまでつながっていると思われることが明らかになった。また、地震観測中に、岩石の熱収縮と関連すると思われる微動が観測された。これは予期しなかったもので、今までに他の火山も含めて観測された事例はほとんどないと思われる。この微動が極めて小さいものであり、空間的に密な地震観測を行ったからこそ発見されたものであると思われる。この微動のメカニズムを詳細に解析することにより、貫入した溶岩ドームの熱収支について知見を得ることができるだろう。
また、1992年から2017年までに撮像された合成開口レーダーデータを用いて有珠山の地殻変動を計測した。観測された地殻変動は過去の噴火によって貫入した溶岩ドーム周辺のみに局在していることが明らかになった。観測された地殻変動は主に沈降であり、溶岩ドームの熱収縮によりよく説明できることがわかった。観測データを説明する岩石の熱拡散係数は、昭和新山については実験室で求められた値とほぼ同じであるが、より最近噴火した溶岩ドームについては実験室で求められた値の10倍の見かけ熱拡散係数が必要であった。有珠山は洞爺湖に隣接し、またマグマ水蒸気爆発が頻発することを考えると有珠山には地下水が豊富に存在すると考えられ、マグマ貫入の初期においては地下水が熱をより効率的に外に逃がす働きをしているのではないかと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、有珠山における地震観測を行い、現在地震波速度構造の解析を行っている。また、当初予想していなかった、岩石の熱収縮と何らかの関係があると思われる地震を発見した。この地震の解析を行うことで溶岩ドームの内部構造だけでなく熱収支についても知見を得ることができ、当初の予想以上の成果が期待できる。また、当初の予定になかった合成開口レーダーによる地殻変動解析を行い、溶岩ドーム周辺の長期間の沈降を観測し、この結果はすでに論文に発表されている。以上のことから、本研究計画はおおむね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年度に行った地震観測のデータを当初の予定通り解析し、地震波速度構造や地震波の散乱特性を求め、溶岩ドームの内部構造についての知見を得る。また、このデータ解析は、地形が急峻な場所での地震波解析の手法開発も兼ねているため、手法開発についての知見も得る。さらに、地震観測中に予期せず観測された微動の解析も進める。地震の検出に近年広く用いられるテンプレートマッチング法などを用いて、人間の目では検出できないような地震も含めできるだけ多くの地震を検出し、地震の発震機構や統計的性質について調査し、観測された微動の性質について知見を得る。この微動は溶岩ドームの熱収縮と関連していると思われるので、この研究により、溶岩ドームの熱収支についての知見も得られるだろう。
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Causes of Carryover |
有珠山昭和新山における地震観測にかかる経費が、当初の予定よりも少なく済んだために次年度使用額が発生した。発生した経費は、今後のデータ解析に必要な消耗品や共同研究者間の議論のための旅費などに用いる予定である。
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