2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the internal structure of the lava dome in Showa Shinzan, Usu volcano, japan, from seismic, gravimetric, and muographic observations
Project/Area Number |
17K05625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 陽介 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90376624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10345176)
青山 裕 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30333595)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 溶岩ドーム / 地震観測 / 表面波トモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
1943-1945年有珠山噴火にともない生成された昭和新山溶岩ドームの内部構造を明らかにするために、昭和新山溶岩ドームおよびその周辺において20数点の臨時地震観測を行った。溶岩ドーム内の地震観測点の距離は100メートル程度である。昭和新山においてはミュオンラジオグラフィにより浅部密度構造がすでに求まっているため、地震観測による地震波速度構造と合わせて溶岩ドーム内部の弾性定数の分布を求めることを通して、高粘性マグマの流出にともなう溶岩ドームに生成メカニズムの理解の進展に貢献することが本研究の目標である。
本研究計画では、これまでに観測された地震波雑微動を用いて表面波の位相速度分布を様々な周波数領域で求めた。それにより、貫入したマグマは周囲の岩石よりも顕著に高速度であることが定性的に明らかになった。このことは、溶岩ドームの数100メートルの空間スケールの中でも水平不均質が顕著に存在することを示しており、通常仮定される、地下構造の水平付近しつが小さく地震波速度構造が深さにより依存するというものが、この場合成立しないことを示す。すなわち、本研究によって観測されたデータから地下の地震波速度構造を求めるには、地下構造の水平不均質や急峻な地形を陽に仮定した新たな手法開発が必要である。
また、地震観測中に、溶岩ドーム内でごく小さな地震が発生していることが明らかになった。これは有珠山周辺の定常観測網では今まで観測されておらず、研究開始前には期待していなかった成果である。この地震は溶岩ドームの熱収縮によるものであると定性的には理解されるが、定量的な解析は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに有珠山昭和新山周辺において地震観測を行い、観測されたデータの解析を継続している。観測の概要についての論文と、地震波速度構造についての論文計2本を発表する予定であり、その準備も予定通りに進めている。
また、地震観測において溶岩ドーム内で発生する地震の発見という予想外の成果があった。この地震のメカニズムについてのデータ解析も進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針は大きく2つに分けられる。1つは、地震観測によって得られた表面波の位相速度分布から地震波速度構造を求め、それを研究論文にまとめることである。本研究を通して、溶岩ドームの水平不均質が予想よりも大きいことが明らかになったので、水平不均質や急峻な地形を考慮した構造解析の手法開発も必要となる。
もう1つは、地震観測により見つかった溶岩ドーム内に発生する地震の解析である。現在のところ、目視で波形が見える地震についての解析を行っているが、テンプレートマッチングなどの方法を用いて、できるだけ多くの地震を検出し、溶岩ドーム内で発生する地震の統計的性質を明らかにする予定である。さらに、発生する地震の時空間分布や震源位置の分布などから、観測された地震の発生メカニズムについて知見を得る予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画の中で最も費用のかかる有珠山における地震観測の費用が当初の想定よりもかかることが予想されたために、本研究計画中で1度前倒し申請を行った。この前倒し申請の中には、論文投稿費用も含まれている。しかし、本年度(令和元年度)までに論文の投稿にまでは至らなかったため、前倒し申請を行った額ほど支出することはなく、次年度使用額が発生した。
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