2017 Fiscal Year Research-status Report
焼結ダストアグリゲイトから惑星はできるか?室内実験と数値実験による衝突現象の解明
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17K05631
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
城野 信一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20332702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂木 洋光 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30346853)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 焼結 / ダストアグリゲイト / 原始惑星系円盤 / 室内実験 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である今年度は,室内実験のセットアップを主として行なった.ガラスビーズを材料に,電気炉を用いて模擬焼結ダストアグリゲイトを制作した.電気炉の中で焼結させる時間を様々に変化させることで,ガラスビーズ間の結合部の大きさを変化させた.作成したアグリゲイトは実体顕微鏡により写真撮影し,焼結時間と結合部半径との関係を実験的に求めた.その結果は,先行研究とおおむね一致していた.この模擬焼結ダストアグリゲイトに荷重を加えるための治具を制作した.本研究費にてロードセルを導入し,引っ張り試験を行い計測ができていることを確認した.引っ張った変形量とその時点で負荷している力との関係から,ばね定数を求めることができた.ここで得られた結果は,予想されるばね定数よりもかなり小さいことが明らかとなった.予想値との大きな隔たりを検討した結果,ロードセルと治具も引っ張り試験中に変形してしまうことが判明した.正しく値を測定するためには,この効果を差し引く必要がある.そのため,形状が同一で材質が異なる模擬アグリゲイトを作成した.材質はステンレス,真鍮,アルミ,ジュラコンである.これらの模擬アグリゲイトを用いた計測結果とそれぞれの材質の弾性率から,装置自体の剛性を見積もることができる.
数値シミュレーションについては,二次元のシミュレーション結果を取りまとめた.その結果,ダストアグリゲイトの密度が結果を大きく左右することが明らかとなった.密度が高くなると粒子間の接触数が増加する.すると全体として剛性が増し,衝突時にアグリゲイト内部で発生する応力が増加する.その結果として,衝突時に形成された新たな接触点にて発生する力も大きくなり,接触点が切断されることでアグリゲイトが跳ね返ることが明らかとなった.これらの結果を論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として,模擬焼結ダストアグリゲイトの作成と力学応答の計測の実現を目標とした.模擬焼結ダストアグリゲイトの作成は,神戸大学中村准教授の協力を得ることで極めて効率的に行うことができた.セラミックスが材質の筒の中にガラスビーズを格納し,それを電気炉の中に入れることで模擬焼結ダストアグリゲイトを作成した.作成したアグリゲイトは同じく神戸大学の瀬戸講師の協力で実体顕微鏡を用いて観察した.この観察により,焼結時間とガラスビーズの結合部の直径との関係を明らかにすることができた.結合したガラスビーズに負荷をかけるための治具を名古屋大学装置開発室および研究分担者の協力の下に作成した.この治具で結合ガラスビーズを固定できることを確認した.ロードセルを導入,治具と組み合わせて模擬焼結ダストアグリゲイトの引っ張り試験を実施できた.
数値シミュレーションについては二次元のシミュレーションの結果を取りまとめた.ダストアグリゲイトの密度が非常に重要なパラメータであることが明らかとなった.密度が大きくなるとダストアグリゲイトの剛性が増し,衝突しても跳ね返ってしまうことがわかった.この結果は論文として発表した.以上のことから,概ね予定通りに研究は遂行できていると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の大きな課題は,室内実験で計測した模擬焼結ダストアグリゲイトの剛性が予想値よりも大きく小さいことである.この差を検討した結果,アグリゲイトを固定する治具とロードセルも試験中に変形してしまう可能性がでてきた.この変形量を事前に計測しておかないと,正しい剛性が計測できない.これら試験装置自体の変形量を求めるため,形状が同一で材質が異なる部材を作成した.これらの部材を用いて変形量を計測しておけば,装置自体の変形量を引き去ることができる.現在はこの試験を実行しているところである.また,治具の剛性を高めて変形量を少なく抑えるために新たな治具を作成する.
現在までに作成した模擬焼結ダストアグリゲイトは,結合部の半径がそれほど大きくなく焼結の進行度合いが高くない.そこで今後はより高温かつ長時間でガラスビーズを焼結させ,あらたに作成した治具と合わせて剛性を計測する.
数値シミュレーションについては,東工大のグループに協力して三次元シミュレーションをすすめている.
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Causes of Carryover |
当初導入を予定したGPU計算機が予算の額により導入できなかったため,通常のCPUを搭載した計算機を導入した.このため次年度使用額が発生した.次年度には米国で開催される国際学会に出席が確定しているため,この参加費として使用する.
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Research Products
(4 results)