2017 Fiscal Year Research-status Report
地震動に伴う地磁気・地電位変動の生成メカニズムと検出可能性
Project/Area Number |
17K05634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 健一 京都大学, 防災研究所, 助教 (20436588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 令慧 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50346061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電磁場変動 / 地震動 / 連続観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震時電磁場変動、特に、従来よりも小さな地震に対する変動の検出を試み、「さまざまな地震時の地球電磁場変動には、どの原因で生じた変動がどれだけ含まれるのか?」、「どの程度の大きさの地震にともなって生じる電磁場変動ならば原理的に観測可能なのか?」を明らかにすることが本研究の目的であり、そのために必要となる理論を構築し、観測を進めることが本研究の内容である。本研究が進むことで期待されるのは、地震学に電磁気学的視点を融合させることを目指す。これまで力学のみに立脚してきた地震学に電磁気学的視点が融合すれば、大地の電磁気物性のいくつかが明らかになることに加え、さまざまな応用、たとえば電磁場観測による早期地震警報の高度化にもつながると期待できる。 理論構築に関しては、地震動にともなう電磁誘導から生じる地球電磁場変動を記述する方程式系を具体的に書き下す、という成果が得られた。この方程式系は、弾性波動場単独の場合は従来より得られているものだが、同様の形で電磁場変動の方程式を書き換えて、電流分布を波数空間で表現することによって、両者を融合した形で記述することに成功した。今後、この方程式系を数値計算コードとして書き下すことにより、さまざまな電気伝導度構造をもつ地殻を想定した地震時電磁場変動の数値計算が可能となる。 観測に関しては、先行する研究活動において四国西部にすでに設置していた地磁気・地電位差連続観測点を整備・維持することで、いくつかの地震発生時を含む1年間の連続観測記録を得た。同地域では、地磁気・地電位連続観測によって得られたデータの解析によって地下構造の解明も進められている。地下構造が明らかにされつつある地域で良質の地磁気・地電位差連続観測記録が得られたことにより、理論解との比較を通じたメカニズム解明が推進できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論構築に関して、当初は、食い違い震源から生じる弾性波動場に対応して生じる電磁場の表現式を、無限媒質および層構造媒質の場合について、閉じた形で求めることを計画していた。実際に研究を進めると、閉じた形の解(解析解)の導出は困難であったので、ハンケル変換を含む半解析解を求め、これと数値計算コードを合わせて作成することにした。半解析解はすでに得られているのだが、数値計算コードの作成には時間がかかったため、まだ動作確認が完了しておらず、完成には至っていない。 観測に関して、当初は、既設観測点を維持するとともに、必要な観測機器を選定してそれを実際に四国西部に追加設置することを計画していたが、当初計画していた場所は期待していたほど観測環境が良くない可能性があるので、新しい点の設置は保留している。既設観測点の維持および継続的なデータ収録は計画通り実施できている。そのため、最終的には当初の見込み以上のデータが得られると期待しているものの、現時点においては稼働観測点は予定よりも少ない。 成果報告に関しては、国内の学会において成果を発表している。それに対して、関連研究者からの十分なフィードバックも得られた。また、国際学会での発表も決定している。しかし、査読付き国際誌における発表には至っていない。 以上、予定されていた理論構築と観測の両面における研究進行の度合いを考慮すると、現時点においては目に見える成果はやや乏しい。しかし、逆に予想以上の結果が得られている部分もあり、最終段階(3年計画の終了時点)においては十分な成果が期待できるといえる。これらを総合的に判断して、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
理論計算に関しては、当初計画では、1年目に完成させた理論解を用いたデータ解析を進めることを予定していた。しかし、理論解を数値計算コードに組み込む部分が完成していないので、これをまず完成させる必要がある。すでに大部分は終わっており、あとは妥当性のチェックのみの段階ではある。しかし、この段階で不十分な点があると、後々的確な結果を出すうえでの支障となるので、作業速度を意識しつつも正確性の確保を最優先して、研究を進める。そのうえで、実データとの比較へとつなげる。 観測のうち、既存観測点の維持・継続は、当初の計画通りに進める予定である。新設点に関しては、すでに使用機器の購入は終えている。今後準備が整い次第、設置作業に入る。観測点を良い状態で設置するには、なるべく気象条件がよいことが望まれるので、梅雨・台風などの影響を避けつつ、適当な時期を選んで実施する。 本研究の根幹部分である理論と観測の融合に関しては、前提となる四国西部比抵抗構造モデルの構築(本研究計画とは別課題)が完成に近づきつつある。その結果を踏まえて、計算を順次進める。 成果報告に関しては、理論計算のコードが完成した段階で、学術雑誌に掲載することが可能なレベルの内容がひとつ得られる。これを速やかに投稿する。ただし、上記計画、特に観測に関しては、実施時期を動かしにくい内容も含まれるので、重複する場合は適宜作業工程を調整しつつ成果報告準備を進める。
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Causes of Carryover |
課題の実施状況を考慮したうえで、成果報告を2年目に行うこととしたため、初年度に使用を予定していた費用の一部(国際会議出席用旅費、論文投稿料および英文校閲料)を使用しなかった。そのために繰り越しが生じた。成果報告は順次進めるため、翌年度使用する見込みである。本報告時点で、すでに一部の支出は確定している。
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