2021 Fiscal Year Research-status Report
大洋間結合の視点から西太平洋気候と熱帯低気圧活動の十年変動プロセスに新知見を創出
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17K05661
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| Research Institution | Kyushu University |
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Principal Investigator |
望月 崇 九州大学, 理学研究院, 准教授 (00450776)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00749179)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 気候モデリング / 十年規模変動 / 中長期変調 / 部分同化実験 / データ同化 / 地球温暖化 / 気候予測 / 熱帯低気圧 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、気候モデルの部分同化実験と熱帯低気圧活動の巧みな検出手法という二つの特色ある技術を融合することによって、西太平洋の大規模気候と同時に熱帯低気圧活動の十年変動プロセスの統合的理解を目指している。本年度は、これまでに発表した投稿論文をさらに発展させた大規模気候変動の物理解析結果について、国際雑誌に投稿していた論文を適宜修正するための追解析を実施した。これまで、各種ペースメーカー実験データや観測データも含めた比較検討により、大西洋の季節から数年、十年規模気候変動によるインパクトとして、変動物理がエルニーニョ現象に似て強い季節性を示すものと気候トレンドに似て赤道上での明瞭な海盆コントラストを示すものに分離できること、及びその相対的な重要度を明らかにしてきた。これは、卓越変動の中長期変調という観点からマルチスケール相互作用として新しい知見を与えるものであり、特に部分同化の派生実験結果も解析して部分同化の性質をより詳らかにすることによって、投稿論文における議論の妥当性を強化してきた。また、観測及び再解析データを用いて、中長期変調の観点から熱帯低気圧活動の様々な指標と環境場との関連性についての検証解析を実施した。
成果公表については新型コロナウイルスの影響が大きく、オンラインでの活動に限定されたが、国内外の学会や研究集会で発表するとともに、海外研究者と関連する共同研究を継続した。なお、関連する膨大なシミュレーションデータについて、その整理とともに新規サーバへの移行作業を実施して、引き続き解析研究の利便性を向上させた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
部分同化実験の大規模気候解析では、太平洋の低緯度域における十年規模変動のゆったりとした変調傾向について、いろいろな海域からのインパクト解析を実施してきたが、その発展として国際雑誌に投稿した論文を修正するための追加解析を実施した。特に、部分同化した赤道大西洋の変動が太平洋起源のものであるかどうかは、この論文で扱っている大洋間結合を大西洋のフィードバックと捉えるべきかもしくはフォーシングと捉えるべきか、という違いを与えるため、プロセス理解に重要な点である。熱帯太平洋のみを同化した派生シミュレーション結果を解析して要因分析をおこなったところ、この赤道大西洋の変動は必ずしも熱帯太平洋に駆動された変動ではないことがわかった。一方、そのなかで、本題とは別にシミュレーションデータの妥当性を担保するために、十年規模よりも長期的な変化傾向についても新たな解釈が必要となった。追加解析を実施することにより、部分同化実験では注目する領域によって気候システムに内在する揺らぎだけではなく、全球的な長期気温変化傾向までも制御する可能性があり、解析時にその影響を考慮することの重要性を指摘した。
熱帯低気圧活動をあらわすデータセットに対する直接的な物理解析には、新型ウイルス感染拡大やデータ格納するディスクの移行などもあり、進捗に遅れがみられる。一方、熱帯低気圧活動の中長期変調について、観測及び再解析データを用いて解析によって理解を強化した。熱帯太平洋では卓越変動であるエルニーニョ現象のほか中長期的な変調傾向もみられる。これら異なる時間スケールでの環境場の変化と熱帯低気圧活動をあらわす様々な指標との関連性について比較検証をおこない、発生域や強度など基礎的な指標における相違点や類似点を整理した。
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| Strategy for Future Research Activity |
今世紀初頭を例に最も明瞭であった大西洋からのインパクトを主題としながら部分同化実験の大規模気候解析から得た成果をまとめた投稿論文について、追加解析を継続して掲載決定にいたるよう修正をおこなう。現状では対面形式での学会や研究集会の実施は、本年度も引き続き困難である可能性が高く、分担者との協働においても対面での実施には不確実性が高い。しかし、以前に比べればリモートな議論の実施体制も整備されつつあるので、代表者と分担者の協働はもとより、成果公表においてもリモートな場を積極的に活用して西太平洋気候と熱帯低気圧活動それぞれで捕捉したインパクトやそれにまつわる変動物理について統合的理解を目指していく。
過去の太平洋での卓越変動や関連する極端気象現象には中長期変調があらわれていて、追解析では、それらには大西洋からのインパクトをあらわす二種類のプロセスのいずれが卓越するかがよく対応していることを示した。大規模気候解析の結果に基づいて、大西洋からのインパクトに注力しながら熱帯低気圧変動に関する解析も継続する。中長期変調の観点から観測及び再解析データを用いて実施した熱帯低気圧活動の様々な指標と環境場との関連性についての検証解析をとりまとめ、発生域や強度など基礎的な指標を中心にして変動物理の理解を深める。これをおこなうにあたっては、近年利用可能となってきた高解像度大規模アンサンブルシミュレーションデータも補助的に参照することで、本研究からの発展研究の方向性を示す。
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| Causes of Carryover |
新型ウイルス感染拡大の影響により、対面形式での学会や研究集会、および研究打ち合わせの多くが取りやめ、もしくはオンライン実施となった。成果公表では、オンライン開催を中心とする国際的な学会や研究集会を効率よく利用して実施したことで、それに対応するための物品整備の必要性が生じたが、旅費や学会参加費などの支出は逆に抑制された。また、新型ウイルス感染拡大の影響を受けて、投稿論文の掲載決定まで進捗がいたらなかった部分もあり、成果公表に関連する費用の支出の抑制につながった。次年度はこれら成果公表に関わる費用が必要である。特にまだ修正中で掲載決定にいたっていない投稿論文があるため、国際雑誌での成果公表のために、投稿料や必要に応じて英文校閲などの論文投稿にかかわる経費として使用する。
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Research Products
(5 results)
