2022 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical investigation on ultrafast electronic relaxation dynamics in transition metal complexes
Project/Area Number |
17K05747
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井内 哲 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (50535060)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遷移金属錯体 / 励起状態ダイナミクス / モデルハミルトニアン / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、鉄(Ⅱ)錯体の励起状態を高速計算できるモデル電子ハミルトニアンを開発し、それを用いた非断熱動力学計算を通じて、鉄(Ⅱ)錯体の励起状態で起こる超高速の緩和ダイナミクスの詳細を明らかにすることを目指した。 前年度までの取り組みで、トリスビピリジン鉄(Ⅱ)錯体のd-d励起状態ならびに電荷移動励起状態を高速計算できるモデルハミルトニアンを開発した。最終年度である令和4年度は、モデルハミルトニアンとsurface hopping法を組み合わせた非断熱分子動力学計算を実行し、トリスビピリジン鉄(Ⅱ)錯体の光励起後の緩和ダイナミクスを解析した。具体的には、surface hopping法を用いたシミュレーションにより、電荷移動励起状態への光励起後に起こる緩和過程を追跡した。トリスビピリジン鉄(Ⅱ)錯体の超高速緩和ダイナミクスは実験・計算の両面から研究されてきているが、緩和経路の詳細に関する議論が続いている。そこで、緩和経路の詳細な解析を試みた結果、本シミュレーションでは、3重項d-d励起状態を通る経路が主であるが、電荷移動励起状態から準安定な5重項励起状態に直接緩和する経路も含まれることが示された。研究期間終了後の本報告時点にて、これらの結果をまとめた論文の掲載が決定している。 本研究期間では、結果として研究対象はトリスビピリジン鉄(Ⅱ)錯体のみに絞られたが、モデル開発とそれを組み合わせたシミュレーションの有用性は示され、種々の遷移金属錯体の緩和ダイナミクスを追跡するための一つの計算方法の基盤を提案できたと考えられる。
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