2018 Fiscal Year Research-status Report
Correlating geometric and electronic structures of weakly interacting molecular thin films
Project/Area Number |
17K05767
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山根 宏之 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (50402459)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子性界面 / 光電子分光 / 軟X線顕微分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
【有機/金属界面における長距離分子間相互作用の精密観測】分子間空隙や分子配列対称性が異なる種々の多環芳香族炭化水素(ペリレン、コロネン、ヘキサベンゾコロネン)の超構造単分子膜を作製し、角度分解光電子分光(ARPES)による価電子状態測定を行った。その結果、分子間での直接的なπ電子の重なりは無いにも関わらず、長距離分子間相互作用によって価電子バンドを形成していることを見出した(J. Phys. Chem. C 2018, 122, 26472)。 【分子軌道可視化法の開発】分子から放出された光電子強度の角度分布(PIAD)のフーリエ変換から、分子軌道を可視化する技術(orbital tomography)が提案されている。この実験には角度分解光電子分光(ARPES)を用いて広範囲に放出される光電子を計測する必要があるが、既存のARPES測定系では実験が難しい。本研究では、広範囲に放出されるPIADを取り込む高効率な電子検出装置の開発に成功した(論文投稿中)。 【高分子ヘテロ界面における接着機能の学理構築】高分子と高分子の接着接合界面における接着機能の発現機構を元素・官能基レベルで解明するため、モデル接着界面の軟X線分光研究に着手した。分子性材料の化学状態に高輝度X線を照射すると試料損傷が生じるため、定量的な化学状態解析は困難となる。本研究では、試料損傷が生じるX線照射しきい値を定量した(J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 2019, 232, 11)。現在、損傷しきい値に基づいた非破壊化学状態測定のスキームを確立し、軟X線顕微鏡を用いた接着界面の化学状態とモルフォロジーの可視化に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子性界面における電子機能(電気特性)に加えて、接着機能(力学特性)について、各種分光技術を用いた電子状態と物性の相関研究に展開するに至っている。これらの研究は論文発表に至っており、順調に計画が進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
【分子性界面の電気特性と電子状態の相関研究】 分子性グラフェンとグラフェンの界面において、特殊な電子状態が発現することが予備的な知見として得られている。理論計算を進めることでπ電子系界面の新奇物性を解明する。 【分子性界面の力学特性と電子状態の相関研究】 高分子系界面における軟X線分光研究の測定スキームや顕微分光装置の開発が順調に進んでいる。これらを発展させ、接着機能を支配する化学状態のnmスケールでの可視化に取り組む。
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Causes of Carryover |
想定していた金額よりも安価で物品購入が出来たため、次年度使用額が発生した。 本使用額は2019年度の消耗品費に充てる。
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