2019 Fiscal Year Research-status Report
有機エレクトロニクス素子を指向した多環式芳香環縮環アズレンの創出
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17K05780
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
庄子 卓 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (60581014)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アズレン / チオフェン / エレクトロクロミズム / 発光性色素 / 環化付加反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
チオフェン部に様々なアリール基を有するアズレノ[2,1-b]チオフェン誘導体を中程度の収率で合成することに成功した。この合成法により、従来の方法では合成が困難であったアズレノ[2,1-b]チオフェンの新たな合成ルートを開発することが可能となった。得られたアズレノ[2,1-b]チオフェンについて、分光学的ならびに電気化学的特性についても検討を行った結果、紫外可視吸光光度法においてアズレノ[2,1-b]チオフェンは有機溶媒中ではアズレン自身と同様の吸収帯を示したが、酸性条件下ではアズレノ[2,1-b]チオフェンの5員環のプロトン化によるトロピリウムイオンの生成により、顕著なハロクロミック挙動が観察された (Org. Chem. Front., 2019, 6, 280-2811)。さらに、本研究で合成したアズレノ[2,1-b]チオフェン誘導体とアセチレンジカルボン酸ジメチルとの環化付加反応によって、チオフェン縮環ヘプタレン誘導体の合成に成功した。現在、この研究結果については論文投稿中である。 縮環アズレン類の重要な前駆体となる2-アリールアズレン類の効率的合成法についても開発を行った。2H-シクロヘプタ[b]フラン-2-オン類とアリール基置換シリルエノールエーテルとの[8 + 2]環化付加反応によって2-アリールアズレン類を合成することが可能となった。2-アリールアズレン類の発光挙動についても検討を行った結果、アズレン誘導体としては高い量子収率を示すことが明らかとなった (Chem. Commun., 2020, 56, 1485-1488)。 さらに、アズレン置換プロパルギルアミン類とテトラシアノエチレンとの反応によるアズレン置換ピロール、ペンタフルベン、ピロロピリジンの新規合成法の開発に成功した。この手法は、縮環アズレン類の官能基化に対して有用な手法になりうると考えられる。この研究成果はChemistry-A European JournalにVery Important Paperとして掲載された(Chem. Eur. J. 2020, 26, 1931-1935)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、前年度の研究を発展的に継承して『アズレンが縮環した多環式芳香族化合物の新たな合成法の開発』を中心に研究を推進した。アズレノ[2,1-b]チオフェン誘導体の新規合成法の開発に成功し、分光学的・電気化学性質を検討することで、今後の分子設計の指針を得ることができた。また、縮環アズレン類の重要な前駆体となる2-アリールアズレン類の効率的合成法についても開発に成功することができた。さらに新規な合成法や官能基化法についても開発することができた。また未発表の結果ではあるが、含窒素複素環やベンゼンやナフタレン環が縮環した新規縮環アズレン誘導体の合成法についても開発することができ、それらの光学特性についても検討することができた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、『新規アズレン縮環多環式芳香族化合物の合成法の開発とその物性測定』を継続し、さらに官能基化されたアズレン縮環多環式芳香族化合物の合成を行う。また、前年度に開発した2-アリールアズレン類を合成前駆体とした縮環アズレン誘導体の合成ならびに複素環縮環アズレン誘導体の合成法の開発も継続して研究を進める。これら新規に合成した縮環アズレン類の分光学的性質評価のため、各種スペクトル測定、量子化学計算さらに電気化学測定を行い、その物性評価を行う計画である。また次年度が、本課題の最終年度であるため、研究成果のまとめも平行して進めていく。
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Causes of Carryover |
本研究は有機化合物の合成研究を主体とするため、フラスコなどの実験器具類ならびに合成試薬やクロマト用充填剤等の消耗品を中心に購入したが、当初の計画よりも安価に購入出来たために若干の繰越金が生じた。2019年度に生じた繰越金は2020年度請求額と合わせて、フラスコ類・クロマト管・還流冷却管等のガラス器具ならびに合成試薬、クロマト用充填剤としてシリカゲル・アルミナの購入に適切に使用する計画である。また次年度が本課題の最終年度であるため論文投稿の際の経費としても使用する。
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