2017 Fiscal Year Research-status Report
カチオン性低配位化学種が配位した遷移金属錯体の合成と小分子活性化
Project/Area Number |
17K05798
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 孝仁 東北大学, 理学研究科, 助教 (90425413)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遷移金属錯体 / カチオン性錯体 / ゲルマニウム / C―H結合活性化 / 水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カチオン性の低配位13族元素または高周期14族元素化学種と遷移金属との間に結合を持つ錯体の合成とその高いルイス酸部位に起因した小分子の活性化を目的としている。当該錯体の簡便な合成法を開発するとともに、小分子との反応を検討して新規な分子変換反応や錯体触媒への応用を行う。平成29年度はゲルマニウムのカチオン性低配位化学種について下記の項目の研究を実施した。 1.カチオン性ゲルミリン錯体を用いた小分子の結合活性化 N-へテロ環式カルベンで安定化されたクロロゲルミレン錯体からクロロ基を塩化物イオンとして脱離させることにより誘導したカチオン性ゲルミリン錯体を用いて、アリールアルデヒドやピリジンなどのヘテロ原子に隣接するC―H結合が活性化されることを見出した。アリールアルデヒドとの反応は同様の構造を持つ中性のゲルミリン錯体でも報告されているが、カチオン性錯体では中性錯体に比べて反応が飛躍的に速いことがわかった。これはカチオン性錯体のゲルマニウム中心の求電子性が中性錯体のものに比べて強くなり、求核的なヘテロ原子との相互作用が強くなったためである。また、カチオン性ゲルミリン錯体はヘテロ原子を持たない末端アルキンとも反応し、アルキンが環化付加した生成物を与えることを見出した。 2.カチオン性ゲルミレン錯体を用いた水素化反応の開発 カチオン性ゲルミリン錯体の金属―ゲルマニウム結合に二水素が付加することで生成するカチオン性ヒドリド(ヒドロゲルミレン)錯体を用いて、ケトンやヘテロクムレンなどのC=O二重結合のヒドロゲルミル化が容易に起こることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、本年度の研究によってカチオン性低配位ゲルマニウム化学種の結合した遷移金属錯体が高い小分子のC―H結合活性化能をもつことを明らかにすることができた。特にピリジンの窒素に隣接するC―H結合の活性化は他のゲルミリン錯体では見られない反応である。また、同錯体を用いて二水素の活性化と活性化した水素を用いてC=O二重結合のヒドロゲルミル化も達成した。まだ化学量論反応であり触媒反応への展開はできていないが、配位子や置換基などを最適化することでこれを達成すべく今後検討していく。また、他の元素への展開として、ホウ素のカチオン性低配位化学種の配位した錯体の原料となるボリレン錯体に関する論文を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、カチオン性ゲルミリン錯体による小分子活性化の探索を検討しながら、触媒反応への展開を目指す。当該錯体の金属フラグメントやゲルマニウムに結合しているN-へテロ環式カルベンを変えた錯体を合成し、反応の一般性や基質適応範囲を明らかにする。また、ゲルマニウムだけでなく他の元素のカチオン性低配位化学種の配位した錯体の合成および小分子の反応について検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は所属研究室に既存の実験器具および試薬を用いることで、研究に使用する物品費が当初の予定額よりも低減したため、次年度使用額が生じた。一方で測定機器の老朽化によりそれの維持・管理費がかかったため、その他の使用額が当初の予定額をやや上回った。測定機器は円滑な研究の遂行のために必須であるため、今年度経費の余剰分を次年度に繰越して、今後も増加が予想される測定機器の維持・管理費に補填する予定である。
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Research Products
(4 results)