2018 Fiscal Year Research-status Report
カチオン性低配位化学種が配位した遷移金属錯体の合成と小分子活性化
Project/Area Number |
17K05798
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 孝仁 東北大学, 理学研究科, 助教 (90425413)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遷移金属錯体 / カチオン性錯体 / ゲルマニウム / C―H結合活性化 / 小分子活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
カチオン性低配位化学種が配位した遷移金属錯体の合成と小分子活性化に関して、以下の成果が得られた。 (1)前年度までの研究で、N-へテロ環式カルベンで安定化されたクロロゲルミレン錯体からクロロ基を塩化物イオンとして引き抜くことにより誘導したカチオン性ゲルミリン錯体により、アリールアルデヒドやピリジンなどの極性不飽和結合を持つ化合物のヘテロ原子に隣接するC―H結合がゲルマニウム中心で活性化されることを明らかにした。今年度はカチオン性ゲルミリン錯体と極性不飽和結合を持たない末端アルケンとの反応を検討し、ビニル基の末端のC―H結合がゲルマニウム中心で活性化され、ゲルマアリル錯体が生成することを明らかにした。理論計算から、この反応ではまず末端アルケンがカチオン性ゲルミリン錯体の金属中心に配位してカチオン性メタロゲルミレンとなり、そのゲルミレン中心でビニル基末端のC―H結合の活性化がおこることが示された。 (2)より安定なカチオン性メタロゲルミレンの合成を目指して、ゲルマニウム上の置換基と金属フラグメントを繋いだキレート環構造をもつカチオン性メタロゲルミレンの合成を行った。ホスフィン部位をもつN-へテロ環式カルベンが配位したクロロメタロゲルミレンを合成し、光反応によって金属上のCO配位子を分子内のホスフィンに置換することで環状クロロメタロゲルミレンを合成した。さらに、塩化物イオンを引き抜くことでカチオン性環状メタロゲルミレンを得た。同様な合成法により、カチオン性環状メタロスタンニレンの合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、本年度の研究によってカチオン性低配位ゲルマニウム化学種の結合した遷移金属錯体が極性不飽和有機分子だけでなく非極性不飽和有機分子であるアルケンに対しても高いC―H結合活性化能をもつことを明らかにすることができた。理論計算により、アルケンのC―H結合活性化は中間体であるカチオン性メタロゲルミレンのゲルミレン中心でおこることが示された。そこで、新規なカチオン性メタロゲルミレンとしてゲルマニウム上の置換基と金属フラグメントを繋いだキレート環構造をもつカチオン性メタロゲルミレンの合成を行った。これによりカチオン性メタロゲルミレンによる小分子活性化の研究をより多方面から検討できるようになった。また、金属-ゲルマニウム間の多重結合による小分子活性化の別のアプローチとして、PGeP型ピンサーゲルミレン配位子を開発し、それを持つ遷移金属錯体の合成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、カチオン性ゲルミリン錯体による小分子活性化の探索を検討しながら、触媒反応への展開を目指す。カチオン性ゲルミリン錯体と非極性不飽和有機分子との反応では、中間体としてカチオン性メタロゲルミレンが関与していることが示唆されたことから、カチオン性メタロゲルミレンを用いた小分子活性化の研究およびそれらを用いた触媒反応への展開も検討する。さらに理論計算による知見を加えて、カチオン性低配位ゲルマニウム化学種の結合した遷移金属錯体によるによる小分子活性化の機構を理解する。また、ゲルマニウムだけでなくホウ素やスズなどのカチオン性低配位化学種の配位した錯体の合成にも成功しているため、それらを用いた小分子活性化の研究も行う。
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Causes of Carryover |
本年度は所属研究室に既存の実験器具および試薬を用いることで、研究に使用する物品費が当初の予定額よりも低減した。加えて前年度の繰越金もあったため、次年度使用額が生じた。その他の使用額は測定機器の老朽化により維持・管理費がかかったため、ほぼ当初の予定額となった。今後測定機器の老朽化によりその維持・管理費の増加が予想されるが、円滑な研究の遂行に必須であるため、今年度経費の余剰分を次年度に繰越しその維持・管理費に補填する予定である。
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