2017 Fiscal Year Research-status Report
高い反応性をもつシラノン錯体の合成とその構造および性質の研究
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17K05802
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上野 圭司 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20203458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シラノン錯体 / 反応性 / 構造 / 合成 / シリレン錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
すでにシリル(シリレン)タングステン錯体Cp*W(CO)2(=SiMes2)SiMe3 (1: Cp* = η5-C5Me5, Mes = 1,3,5-Me3C6H2)とピリジン-N-オキシド(PNO)を4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)共存下で反応させることで,DMAPが配位して安定化されたシリル(シラノン)錯体Cp*W(CO)2{O=SiMes2(DMAP)}SiMe3 (2)が得られることを明らかにしている。錯体2は初めてのシラノン遷移金属錯体であり,その反応性に興味が持たれるが,PNOおよびROH(R = H, Me)以外ほとんど反応しない。そこで,より反応性の高いシラノン錯体の合成を目指して,DMAPよりも配位力の弱いピリジン(py)が配位したシラノン錯体の合成を行った。 当初,ベンゼンあるいはヘキサン中,過剰のピリジン共存下で錯体1とPNOとの反応を検討したが,生成した錯体の分解が速く単離には至らなかった。そこで,ピリジンを溶媒として錯体1とPNOとの反応を行い,目的とした錯体Cp*W(CO)2{O=SiMes2(py)}SiMe3 (3)の合成に成功した。錯体3は,茶色結晶として収率35 %で単離され,NMR, IR, 元素分析およびX線結晶構造解析により同定した。 錯体3の結晶構造は,DMAPが配位したシラノン錯体2の構造とほぼ同一であった。ただし,錯体3のシラノンのケイ素原子とピリジンの窒素原子との結合距離は,DMAP配位錯体2の対応する距離よりも有意に長かった。この事実は,ピリジンの配位がDMAPの配位よりも弱いことを示唆している。実際,C6D6中で錯体3に1当量のDMAPを加えると,錯体3は完全に消失して錯体2に変換された。 現在,錯体3の反応性を検討しているが,期待通り,錯体2よりも反応性が高いことが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していたピリジンが配位して安定化したシリル(シラノン)錯体の合成・単離に成功し,元素分析と結晶構造解析を含む同定が終了した。現在反応性の検討を進め,すでに新しい反応が見つかっており,当初の想定より順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり,このまま継続する。また,シラノン錯体の硫黄類縁体であるシランチオン錯体の研究も検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進展し,購入した消耗品が少なくてすむなどにより次年度使用額が発生した。次年度使用額は全額,2018年度分として請求した助成金と合わせて研究に使用する。
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