2018 Fiscal Year Research-status Report
ポリシランと各種高分子材料との特異的な相互作用発現メカニズムの解明と工業的応用
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17K06003
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
徳満 勝久 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70336717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 宏樹 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (80313568)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリシラン / シリコーンゴム / 融着特性 / 力学物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018度は、ポリシランをシリコーンゴムに添加することによる複合材料としての物性評価研究を実施した。シリコーンゴムは、化学的に安定なSi-O結合を分子鎖中に有する高分子であり、低いTg(約-50℃)を持つものの, 耐熱・耐寒性, 高電気絶縁性, 化学的・生理学的不活性などの優れた特性を有する。そのため、自動車部品や電子部品, さらにはカテーテル素材等として幅広く使用されている。しかしながら、シリコーンゴムは表面自由エネルギーが小さいことから同種・異種材料との相互作用が小さいため、接着性に乏しいという課題がある。 そこで、本研究ではポリシランにポリメチルフェニルシラン(以下PMPS)を用いて、代表的なシリコーンゴムであるPoly dimethyl siloxane(以下PDMS)に添加することにより、PDMSの接着性の向上および力学物性の改質効果、およびPMPSのPDMS添加剤としての可能性について検討を行った。各種ブレンド材料の引張試験を実施結果、PDMSにPMPSを5wt%添加した系では弾性率が顕著に低下し、破断も生じなくなる顕著な“延性化”効果を発現することが明らかとなった。しかしながら、同量のSi-oilを添加した系では若干の弾性率の低下傾向は認められるものの、延性化効果は発現せず、上記物性の改質効果はPMPS特有であることが示唆された。次に,Neat PDMS,PDMS/PMPS(5 wt%)、Si-oil(5 wt%)添加サンプルにおける240 ℃での融着時間に対する剥離エネルギーの変化について検討を行った。その結果、Neat PDMSでは熱融着しなかったのに対し、PMPS 5 wt%添加サンプルでは融着時間200秒から剥離エネルギーの増加が観測された。一方、PMPS 3wt%添加試料では5wt%添加試料と比べて剥離エネルギーの増加効果は小さいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りおおむね順調に進捗している。なお、今年度は新たにシリコーンゴムへのポリシラン添加による複合化効果を検討したところ、予期しない特異的な効果(顕著な延性化効果、融着特性効果等)が発現したため、その基礎検討を主体として実施したが、学会等での発表後に多数の問合せがあり、産業界への応用展開・波及効果は高まったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は以下の通りである。 ①前年に引き続きシリコーンゴムとの複合化について検討を実施し、特に融着特性発現のメカニズムについて基礎的検討を実施する。 ②実験結果をより詳細に理解するため,PSiの分子量効果,すなわちモノシラン~4量体ポリシランを中心としてPPを始め,エンプラ系材料とPSi分子との相互作用エネルギーを電子構造の計算(MO)および分子動力学 (MD)シミュレーション(MD/ME - Scigress/ ver.2. 2)による解析を行う。 ③工業的応用を目的として,現在我々の身の回りで多く用いられているガラスファイバー(GF)を補強剤とするフィラー充填系高分子複合材料へのPSi添加効果の研究を行う。特に,流動性改質効果と延性効果発現が期待されるので,それらの影響について検討する。
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Causes of Carryover |
各種原料、実験用備品および試薬の納入時期が年度末間際になるため、翌年度繰り越しとした。翌年度に請求した助成金と合わせて、本年度の購入計画を再度策定した結果、研究計画には何ら支障はない。
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