2019 Fiscal Year Research-status Report
導電性と透光性を備えた大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜の移動電界印加による試作
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17K06061
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 寛 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90179242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グラフェン / 複合材料 / 導電性 / 透光性 / 一方向配列 / 移動電界 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和1年度にはグラフェンに,令和2年度にはさらに還元形酸化グラフェンに添加材を変更し,懸濁物に移動電界を印加して未硬化樹脂中で添加材を一方向に配列させている.令和1年度における添加物のグラフェンへの変更は,グラフェンの方が従来使用していたCNTの添加に比べ電気伝導率が高くなるとの報告によるものであり,令和2年度における還元形酸化グラフェンへの変更は,添加物と樹脂と親和性の向上を狙ったものである.グラフェンと樹脂との懸濁物を作製するには,予めグラフェンを界面活性剤で処理していたが,還元形酸化グラフェンへの変更よりこの工程が不要となるとともに,添加材と樹脂との間に界面活性剤といった別の層が存在しなくなった.別の層の存在がなくなることにより,添加材の一方向の配列時に,添加材同士の接触抵抗が低減され,電気伝導が発現すると予想した. 還元形酸化グラフェンと樹脂との懸濁物を18 mm×18 mm×0.05 mmサイズのカバーガラスに滴下し,スピンコータを用いて懸濁物をカバーガラス上に厚さ約50mμmで広げた.これを従来から使用している直線状電極が24本並んだ多重電極上に置き,この多重電極に60°ずつ位相が異なる±300Vの六相矩形波電圧を印加し,懸濁物に移動電界を加えた.懸濁物中の還元型グラフェンの重量含有率は,0.1 wt%~0.5 wt%の範囲で,どの重量含有率でも一方向に還元型グラフェンが連結して配列した. 一方向配列後に樹脂を硬化させ二端子法により複合材の電気抵抗率ρを測定した.残念ながら今回実験を行った範囲の還元型酸化グラフェンの添加量では,添加による電気抵抗の低下は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要とは別に,大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜の作製方法についての理論的検討も行った.導電性ナノファイバと未硬化樹脂の懸濁物の膜の上に円筒状多重電極を置き,円筒状多重電極を回転させ,その直下に位置する導電性ナノファイバを一方向に配列させるとともに懸濁物の膜をゆっくりと移動させることにより,大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜が作製可能であることを示した.円筒状電極の各電極に印加する電圧は直流電圧と多相矩形電圧の2種類について検討し,多相矩形電圧の方が大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜が作製しやすいとの結論を得ている.この結果は「日本機械学会論文集」に昨年掲載されている. さて,実績で述べた電気伝導性が発現しない問題である.還元型酸化グラフェンを樹脂に添加すると電気伝導性が発現するとの報告が他の研究者からなされていることから推察して,還元型酸化グラフェンの添加量の問題ではないかと考えている.そこで,現在は添加量を増やして導電性が発現するかのチェックを行っている段階である.電気伝導性が発現する添加量をまず求めて,その量より少ない添加量を持った懸濁物に移動電界を印加させ,添加物を一方向に配列させ,電気伝導が発現すれば,当初の研究目標の最低限はクリヤすると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記した事項を実施し,結果を論文としてまとめることが大きな課題である.また昨年度実施できなかった,一方向に連結したグラフェンの状態を画像解析することも計画している.グラフェンの重量含有率を増加させると連結したグラフェンの束は太くなり,また束の数も増加する.この状態を解析し,グラフェンの連結の過程の解明の一助になればと考えている.
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Causes of Carryover |
頭書の申請時の経費についての使用計画の変更はない.差額については,実験遂行に必要な消耗品購入に充てる計画である.
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