2018 Fiscal Year Research-status Report
Realization of Ultra High Resolution Grid-Based Shape Modeling
Project/Area Number |
17K06075
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
乾 正知 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (90203215)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デクセル / 立体モデルのデータ圧縮 / 工程設計支援 / 安全性評価 / 加工シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も2つの研究方針で臨んだ. 一つは,超高解像度の格子ベースデクセルモデルの実現である.本プロジェクトでは,3方向デクセルモデルを形状表現として採用し,デクセル定義の元となる格子の解像度を従来の数千から数万に向上させることを目指している.研究提案の時点では,データ圧縮技術の併用による解像度向上のみを考えていたが,用途によってはデータ圧縮技術を用いなくても,高解像度化が可能なことが分かってきた.例えばNC加工で多用される等高線状の経路の計算であれば,X方向とY方向については十分な解像度の格子が必要だが,Z方向については等高線の段数分の解像度が得られれば十分となる.この考え方に基づいて,数万解像度の格子を用いて等高線経路を高速かつ安定に計算するソフトウェアを実現した. もう一つの方針は,格子ベースの設計製造支援のアプリケーションの充実である.既に開発済みのアプリケーションの実用化と並行して,今年度は以下のアプリケーションの新規の開発を行った.いずれも3方向デクセルモデルを形状表現手法として採用している. ・加工中の工具工作物接触エリアの変化を高速かつ高精度に計算する切削加工シミュレーション.・LSI用ウェーハの研削加工によるウェーハ表面の形状変化を高速高精度に解析する研削加工の幾何的なシミュレーション.本研究はその先進性が高く評価され平成30年度の精密工学会論文賞を受賞した.・逆距離場と呼ばれる新しい概念を用いて立体内部の厚み変化を可視化する技術.本研究では立体のスケルトンに基づいて距離場を構築する.スケルトンの定義を変えることで,多様な厚み評価が可能となる.・立体形状のオフセットに基づく部品形状安全性評価システム.球体の衝突に基づいて安全性を評価する手法では,部品形状により球体の接近方向が制約されることがある.このことを立体のオフセット形状を用いて解析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す2つの理由から,研究はおおむね順調に進展していると判断した. 本研究の主要な目的である超高解像度のデクセルモデリングについては,精度保証を伴うデータ圧縮アルゴリズムの開発に成功している.その一方で当初予定していたGPUによるデータ圧縮の並列処理化は未達成という状況である.そのためこの課題については,研究は少し遅れていると考えられる. その一方で,デクセルモデルやその拡張形式である3方向デクセルモデル,2次元デクセルモデル,そして放射状のデクセルモデルについては,その表現形式やアプリケーションの開発が予想を超える進展を見せており,研究は当初の計画以上に進んでいると評価できる.以上を総合的に評価すると「おおむね順調な進展」という判断が妥当と考えている. なお研究成果は学術誌論文2編,国際会議論文8編に報告されている.また本研究の成果に着目した企業と複数の共同研究を開始しており,その意味では質的にも量的にも十分な成果を上げられたと考えている. 前述した研究の遅れだが,研究そのものに困難があるというよりも,他の研究テーマや企業との共同研究が急速に展開した結果,研究実施の時間が取れないことが主要な理由と考えられる.来年度は研究時間の配分を調整し,研究の遅れを取り戻したい.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度からは,遅れているデータ圧縮アルゴリズムのメニーコア・アーキテクチャの並列処理プロセッサへの実装と,データ圧縮を併用した図形処理ソフトウェアの開発,そしてデクセルモデルから境界表現モデルへのデータ変換技術へと研究を進める.デクセルモデルは本質的に並列処理に向いており,われわれが開発した集合演算等のソフトウェアも,GPUの並列処理機能を利用する形で実装されている.この集合演算ソフトウェアにデータ圧縮機構を組み込み,データの展開・圧縮を繰り返しながら高解像度のデクセルモデルを処理するソフトウェアを実現する. デクセルモデルから境界表現モデルへのデータ変換については,当初はわれわれが独自に考案したQuad Pillarsと呼ばれるアルゴリズムの利用を考えていた.このアルゴリズムは,隣接する4格子のデクセルを線分列と見なし,これらの構成する柱形状に基づいて立体表面を覆うポリゴンを抽出する.この手法は並列処理に向いており,比較的平坦な面を滑らかかつコンパクトに記録できるが,縦壁を表現するポリゴンの精度と品質が低下しやすいという欠点がある.近年,Quad Pillar法を改良することで,このような問題が解決でき,さらにマーチングキューブ法やDual Contouring法よりも高品質な多面体化が可能な手法の兆しが見えてきた.2019年度はこの手法の検討も進めたい. さらにデクセルモデルを利用したアプリケーションの開発を継続するとともに,成果のオープン化や実用展開についても作業を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
米国メリーランド州のNISTで2019年4月1日から開催された国際会議Model Based Enterprise Summitにて発表するため,2018年3月31日から2019年4月6日に米国出張することになった.当初見込み額と実際の旅費との差額が生じたため,次年度に使用することとした.この次年度使用額については,2019年度の旅費に組み込んで利用する予定である.
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