2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06132
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 伸哉 長野工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (90616129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公差解析 / 幾何公差 / がた |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,公差解析に関する学術を広く調査・収集して体系化し,その過程で全体を俯瞰して不足点を補い,公差解析を学術として発展させることである.初年度であるH29年度は,広く文献を集めつつ,その中でまだ不足していると思われた,いわゆる「がた」の求め方について,詳細に検討を行い,学会発表【実績1】ののち,学術論文【実績2】として投稿し採択された.さらに,ワークブックを出版【実績3】し,随筆【実績4】を執筆した. 【実績1】鈴木伸哉,若山 昇:穴と長円の穴を用いた位置決めによる組立ばらつきの解析, 日本設計工学会2017年度 春季研究発表講演会, (2017)pp.189-192. 【実績2】鈴木伸哉,若山 昇:穴と長円の穴を用いた位置決めによる組立ばらつきの解析, 設計工学,52,9 (2017)pp.553-556. 【実績3】鈴木伸哉,杉山裕一:公差設計スキル認定試験「3級・4級」対応 公差設計ワークブック,プラーナ―出版 (2018) ISBN 978-4-9905264-0-7 【実績4】鈴木 伸哉:日本の製図維新 前夜 / アメリカ GD&T 留学記,設計工学会誌,53,1(2018)pp.2-9. 【実績1】および【実績2】は,穴と長円の穴を用いた位置決めの際に,いわゆる「がた」の影響を詳細に検討したものである.これは,精密プラスチック部品や,プレス部品などでよく用いられる方法である.【実績3】は,高専・大学の高学年から社会人1~2年目程度向けに作成した公差解析の問題集である.問題集の作成段階で,公差解析の分野から網羅的に問題を取り込むことを試みたので,公差解析の分野の体系化を考える上での基礎となった.【実績4】は,研究代表者が,H29年度に渡米し,アメリカの公差解析の専門業者との交流を随筆としてまとめて学会誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は,文献の収集・調査から始め,研究実績の概要でも述べた論文を執筆しつつ,8月より平成30年度の3月までの8カ月間,国立高専機構の在外研究員として,ノースカロライナ大学シャーロット校のエドワード・モールス教授のものとで,公差解析と深く関連する幾何公差を習得した.さらに,アメリカでは,公差解析の調査・研究も並行して行い,現地の専門家であるBryan Fishcer氏と交流し,公差解析の見識を広めることができた.Fischer氏の執筆した400ページを超える公差解析の専門書「MECHANICAL TOLERANCE STACKUP AND ANALYSIS」の翻訳を行った.現在,著者から許諾を受け,和訳版を出版すべく日本の出版社と交渉を進めている. これまでの調査で,公差解析は,Fishcer氏のように幾何公差と並んで普及している実践的な部分と,より学術的で現場のエンジニアが使用することはほとんどないが,公差解析のソフトウェアに組み込まれるような統計的な演算に用いられる部分の2つに分かれているように見受けられた.前者の専門家は,ASME Y14.5の会議に参加していることが多く,後者の専門家は,CIRP(The Scientific Technical Committee Design of the International Academy for Production Engineering)のCAT(Computer Aided Tolerancing)の会議に参加することが多いようである. このように,公差解析の進んでいる欧米の様子がわかりつつあり,今後の公差解析の学術体系化に向けた基礎が作られつつあるため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は,昨年度渡米中に購入した書籍を読み進めること,「MECHANICAL TOLERANCE STACKUP AND ANALYSIS」の翻訳を出版向けて進めること,また,出版が決まれば,改めて日本語の表現方法には再考が求められるので,改めてFisher氏の公差解析の全体像を俯瞰するといったことから着手する. さらに,これまで公差解析の調査を行ってきた中で,公差解析にかかわる用語にゆらぎがあることがわかった.そこで,研究代表者と関東学院大学の金田教授らとともに,設計工学会より公差解析用語のJIS標準化を進める.言葉の標準化も公差解析の学術体系化と深くかかわると思われる. 学術論文としては,穴と長円の穴のがたを求める研究の続報にあたる論文をすでに投稿しており,順調に進めばH30年度末ごろには掲載されるものと思われる. 上記に加えて,本年度より公差解析ソフトウェアの調査も段階的に着手する.
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Causes of Carryover |
予算執行において,最終調整時に17円の余剰を調整しきれなかったため.
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