2018 Fiscal Year Research-status Report
弾性と運動による壁面近傍の渦度の成長メカニズムの解明
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17K06161
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渕脇 正樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60346864)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非定常流れ / はく離 / 翼 / 非定常運動 / 渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
流体構造連成解析および渦法を主として,弾性運動翼壁面近傍の渦度の成長に寄与するパラメータ,さらには,その成長メカニズムの解明を目的とし,弾性運動翼壁面上で回転成分を強化しながら成長し,後流へと放出された渦の特性を明らかした.特に,以下の知見を得た. ヒービング運動する弾性運動翼は,その弾性変形により,壁面の空間勾配が大きく変化する領域が存在する.その空間勾配が大きく変化する領域では,壁面上の広範囲に強い渦度が成長する.剛体翼に比べると,弾性翼壁面上には,約20%も広範囲に渦度が成長することが明らかになった.また,弾性翼壁面上に発達する渦度は,剛体翼に比べて,最大2.5倍の強さを有しており,強い回転成分を有する渦であることも明らかになった. ヒービング運動する弾性運動翼壁面上を成長する渦度は,弾性による壁面の瞬間的な空間勾配が強く寄与していることが明らかになった,すなわち,その壁面の空間勾配の時間変化がその成長のための重要なパラメータの一つであることが明らかになった.その一方で,翼形状そのものが持つ空間勾配は,弾性変形により生み出される空間勾配に比べると,その影響は極めて小さいことも明らかになった. ヒービング運動する弾性運動翼壁面上を成長する渦度が,弾性による壁面の空間勾配の時間変化が強く寄与していることは,渦法からも同様の結果が得られた.渦法に導入した矩形渦および渦blobの定義より,これらの渦は,壁面近傍に定義した十分に薄い渦度の層から放出された離散的な渦要素であることから,弾性運動翼の壁面の移動と渦度の成長を関連付けることが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弾性運動翼壁面近傍の渦度の成長に寄与するパラメータを見出し,その成長メカニズムを明らかにすることを目的とし,ヒービング運動する弾性翼および剛体翼まわりの流れ場を対象にした流体構造連成解析を主として行ってきた.特に,弾性翼の弾性変形に対して,その壁面近傍の流れ場を定性的に可視化するだけでなく,渦度の時間発展およびその速度分布を定量的に捉えることで,その渦度の成長メカニズムの一端を明らかにした. 一年目は,弾性変形により作り出される渦の成長過程を明らかにした.特に,ヒービング運動の上死点から下死点に動く時に,下向きの弾性変形が大きくなるため,翼背面の壁面近傍には,剛体翼に比べて,時計方向回転の強い渦が広範囲に成長すること,その際,境界層に運動量を与えているかのような速度分布になること,さらには,弾性翼の壁面近傍に成長する渦は,その第二不変量が大きいことから,弾性変形により成長する壁面近傍の渦の渦度は,回転成分が支配的であることが明らかになった. 二年目は,この成長する渦度に寄与するパラメータを精査した.その結果,ヒービング運動する弾性運動翼は,その弾性変形により,壁面の空間勾配が大きく変化する領域が存在し,その空間勾配が大きく変化する領域では,壁面上の広範囲に強い渦度が成長することが明らかになった.すなわち,弾性による壁面の瞬間的な空間勾配が壁面上を成長する渦度に強く寄与することがわかった.また,翼形状そのものが持つ壁面の空間勾配が壁面を成長する渦度に与える効果は,弾性変形により作り出される空間勾配に比べると非常に小さいことも明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
弾性運動翼壁面上を成長する渦度に寄与するパラメータが壁面の空間勾配の時間変化であることの仮説を証明するために,ヒービング運動しながら後部だけが回転運動を行う後部駆動翼の壁面近傍の渦度の成長を定量的に評価する.主として,数値シミュレーション(ANSYSおよび渦法)により行い,特に,渦法の矩形渦および渦blobの定義を逆利用することで,壁面を生成・成長する渦度の一連の生成・成長メカニズムを明らかにする.また,渦度の生成・成長メカニズムだけでなく,その渦度の質にアプローチする.特に,壁面の空間勾配の時間変化がどのような過程を経て,渦度の生成・成長を促しているのか,さらには,後流へ吐き出され,マクロなスケールの渦へと発展した後に,どのような振る舞いをし,力学的にどのような作用をもたらすのかを定量的に明らかにする.また,弾性運動翼壁面上を生成・成長する渦度が,前縁はく離渦の動的挙動へ与える効果を明らかにする.これまでの研究成果より,弾性変形は,前縁はく離渦の成長の遅れに寄与していることも明らかになっており,そのメカニズムを明らかにする.さらには,これまでに明らかにしてきた渦度の成長メカニズムを証明するために,渦度の成長を促進する弾性変形を実現し,それに対する任意の後流構造を創造する.
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