2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on Generation Mechanism and Control of Aerodynamic Noise Radiated from Longitudinal Vortex
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17K06174
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
尾川 茂 呉工業高等専門学校, 機械工学分野, 教授 (90714262)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 空力騒音 / 縦渦 / Lighthillの理論 / Howeの渦音理論 / Green関数 / 自動車の縦渦 / 時間微分圧力変動 / 流れによる音の発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、工業的にも注目されている、流れ方向に回転軸を有する縦渦が励起する空力騒音を対象として、縦渦による空力騒音を実験と解析で分析し、理論を踏まえて総合的に空力騒音の発生機構を考察した。 実験領域ではJAXA殿との共同研究体制を構築し、JAXA低速風洞を使用し三角翼の前縁に縦渦を発生させて音源分布を調査した。流速は10,15,20m/sで迎角は15°である。96本のマイクを放射状に配置した直径1.5mの円形状のマイクロホンアレイを使用して音源を調査した。その結果、音源は翼の先端部と後端部の2か所にあることが判明した。ビームフォーミング法によって周波数別に音源箇所を分析した結果、先端部では500Hz以上の広帯域音、また後端部では100Hz近傍にピークのある狭帯域音の特性を示した。遠距離場で収録した空力騒音の速度依存性は、概ね流速の6乗に比例し表面の圧力変動に起因する二重極音の特性を示した。 解析領域では、実験で得られたこれらの空力騒音の発生機構を市販ソフトSTAR-CCM+および兵庫県立大学のスパコンを使用し、1億メッシュ規模の大規模解析を実施した。実験値との差は数dBであることから解析手法の妥当性が検証できた。この手法で先端が絞られた円錐形状の各断面内での渦の挙動を調べた。その結果、先端部では渦の強さを示す渦度が最大で、後方にいくにつれて無数の小さな渦に分裂し、渦度も減衰していく様子を捉えた。 理論面では、実験と解析で得られたデータを基にして、Lighthill方程式やHoweの渦音理論等から空力騒音の発生機構を総合的に考察した。音源評価には渦度と流速の外積成分の時間変動の大きさが重要因子であることが理解できた。この評価指標で実験と解析で得られた結果から、縦渦先端では強い渦度の非定常性が広帯域音の音源となり、後端では翼端渦が音を励起していると推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のゴール目標は、縦渦による空力騒音について、騒音の発生機構、縦渦の制御および空力騒音の低減の3つから構成されている。 空力騒音の発生機構については、JAXA殿との共同研究や兵庫県立大学のスパコンによる大規模解析が極めて順調に進んでいる。 縦渦の制御については、これまでの研究で得られた知見から、縦渦先端が制御に重要な部位であることが把握できた。先端部に外乱を与えることで制御ができる見通しである。 また、空力騒音低減に関しては、流れ場の渦度と速度の外積成分の非定常性が重要因子であることが分かってきた。 以上のことから、縦渦の制御と空力騒音の低減については課題であるが、今年度の実験と解析の計画に織込み済みであることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
空力騒音の発生機構の解明については、JAXA殿との共同研究として今年9月にJAXA風洞にて実験を予定している。この実験では渦の影響を定量的に把握するため、直径1㎜の超小型マイクロホンによる多点計測で翼表面の圧力変動のデータを収集する。また、三角翼の頂角を現行の90°に加え、60°と120°を加えて縦渦の音源分布と翼表面圧力変動の関係を明らかにする。 解析では兵庫県立大のスパコンによるNavier-Stokes方程式の直接解法に挑戦し、高精度解析を行い、渦による音波の発生機構をより精度高く行い、渦の非定常運動と音波の発生の関係を可視化する。 縦渦制御では、翼先端部が重要部位であることが分かったので、先端部に外乱を発生させる機能を持つパーツを取り付けることを考えている。 空力騒音低減に関しては、縦渦が崩壊することで空力騒音の発生がどの程度減少するかを、今回の研究で見出した評価指標で定量的に把握する予定である。
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