2017 Fiscal Year Research-status Report
均質化とトポロジー最適化を援用した多孔質吸音材微視構造設計法の構築
Project/Area Number |
17K06238
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
山本 崇史 工学院大学, 工学部, 准教授 (30613640)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 吸音率 / 多孔質材料 / 微視構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
発泡系吸音材の代表的な微視構造として矩形セルおよびケルビンセル,また,繊維系吸音材の代表的な微視構造としてパラレルファイバーセルを用いた.その空孔径や繊維系をパラメータにとることで,種々の微視構造をパラメトリックに表現し,研究代表者がこれまでに構築している多孔質吸音材に拡張した均質化法を適用して,等価密度,等価体積弾性率,等価弾性テンソルを算出した.算出結果に,複素数に拡張した非線形最小二乗法を用いてBiotのパラメータを推定し,求めたBiotパラメータと微視構造の寸法パラメータを関連付ける実験式を推定し,その式に含まれる項の係数を最小二乗法により同定した.これにより微視構造の寸法からBiotパラメータを求め,Biotのモデルを適用して,吸音率などの巨視特性を効率よく求めることを可能にした. そして,各セル構造について,指定した周波数における垂直入射吸音率が最大になる微視構造の寸法パラメータと材料物性値(ヤング率,密度,損失係数)を,遺伝的アルゴリズムを用いて,大域的に探索した.その結果,いずれの対象周波数においても垂直入射吸音率が1となる微視構造の寸法と材料物性値を得ることができた.なお,設計変数の上限および下限は実現可能な寸法あるいは物性値の値としている.また,得られた最適な微視構造を有限要素により実形状を構築し,均質化法により計算を行った結果,最適化の過程で算出した吸音率とおおむね同じ値となることを確認している.1kHz以下の低周波数域において垂直入射吸音率の大きい材料を設計することは一般的に難しいとされているが,本最適化手法を用いることで,実現可能な微視構造を示すことができた.最適化により得られた微視構造を有する吸音材料が実際に試作可能かどうかは企業との共同研究などを通じて検討することを考えている. .
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画においては理論的に扱うことのできる2次元の円管流路などを対象に,流路径などの寸法を最適化することを考えていたが,Biotのモデルという理論と経験則から構築されたマクロスケールモデルを中間的に用いることで,任意の微視構造についての寸法最適化を行えるようにした.Biotモデルに含まれるパラメータには,均質化法による計算から直接求められるものと,経験則にもとづいた非物理的で均質化法の計算から直接求められないものがある.直接求められないパラメータについては,均質化法による計算から得られる等価密度および等価体積弾性率に合致するよう,非線形最小二乗法を用いて推定することとした.微視構造の寸法パラメータとBiotモデルのパラメータを関連づける式を均質化法による数値実験により求め,寸法最適化はBiotのモデルにより行うという新たな材料設計法を構築することができたという点においては,計画よりもよい進捗であると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度構築した吸音材微視構造の寸法最適化法については,いくつかの代表的な微視構造に適用し,その有用性を検証する予定である.また,別途検討している吸音材の微視構造モデル化においてその精度が確認できたものについては,順次,本寸法最適化を適用し,最適な微視構造の寸法を検討する.最適化の目的関数は,現状,垂直入射吸音率のみであるが,もう一つの代表的な評価指標である透過率についても目的関数に設定することを検討する.なお,最適化により得られた寸法を有する微視構造を有する吸音材料を実際に試作可能かどうかは企業との共同研究などを通じて検討する予定である. また,当初の計画どおり,今年度以降は吸音材微視構造のトポロジー最適化に取り組む予定である.吸音材は固体相と流体相から構成される二相材料であり,各相の連成効果も特性に影響するため,その取扱いは複雑にならざるを得ない.そこで,まずは固体相あるいは流体相のいずれか一方を対象としたトポロジー最適化から検討することを考えている.目的関数としては吸音材の最も代表的な特性である垂直入射吸音率の最大化に設定する.しかし,JISなどの規格で規定されている求め方は,トポロジー最適化の目的関数としては扱いにくいため,垂直入射吸音率の定義式でもある材料内部における散逸エネルギーの積分値を最大化するというアプローチを考えている
|
Causes of Carryover |
今年度の直接経費1,500,000円に対し,約5%に相当する76,714円の残額が発生してはいるがおおむね計画どおりに研究費を執行できたと考えている.平成29年度の残額は,平成30年度に計画している消耗費品費や旅費などが不足した場合に充当する.
|
Research Products
(4 results)