2020 Fiscal Year Research-status Report
配電線多相フラッシオーバ解析手法の高度化と配電線雷事故率低減手法への適用研究
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17K06317
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
関岡 昇三 湘南工科大学, 工学部, 教授 (60410031)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高圧配電線 / 耐雷設計 / フラッシオーバ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までは、外部ノイズの影響が小さい印加電圧波形からフラッシオーバ時間を推定していた。これにより各がいしでの電圧測定が不要となり実験的検討においては有用な手法であった。しかしながら、光学的な観測から1相あるいは2相フラッシオーバであるかを判定することができたが、多相フラッシオーバ特に同じがいしを用いた場合には、ほぼ同じ時刻でフラッシオーバが生じることが多いため、フラッシオーバ時刻を精確に判定することは難しかった。 令和2年度は判別が難しい2相目のフラッシオーバ時間を測定するためにCTを用いる方法を提案した。提案手法はフラッシオーバ後に相導体に流れる電流を測定し、印加電圧と導体電流の測定系における時間差をあらかじめ測定しておくことにより、フラッシオーバ時刻を求める手法である。提案手法により2相フラッシオーバ時刻を判定できることを実験的に明らかにした。今回の実験ではCTは2本の導体の内、1本だけに設置した。そのためCT設置導体において1相目のフラッシオーバが発生した場合には精度が低下することが確認された。全ての相におけるフラッシオーバ時刻を確定するには全相にCTを設置する必要があるため、この点は今後の課題となった。 研究成果を広く普及させるために、高圧配電線の耐雷設計に関する設計者や研究者が多く参加している電気学会「高圧配電線耐雷設計の技術変遷と合理化に向けた課題に対する調査専門委員会」およびCIGRE(国際大電力会議)「WG "Guidelines for the estimation of overhead distribution line lightning performance and its application to lightning protection design」に参加し研究成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は本研究の最終年度であり、研究のまとめおよび研究成果を電力会社の実際の配電線に適用する際に必要となる事項を中心に研究を進める予定であった。研究は順調に実施することができたので、研究としては初期の目的を達成できた。しかしながら、最終的にまとめに入る段階、すなわち令和2年に入り新型コロナウイルスの急激な拡大によって電気学会を初め国内外の各種の学会における活動が停止ししてしまった。それにより、研究成果のとりまとめと成果のアピールという最終段階が未達となっている。すなわち、研究成果を実際の配電線に適用するための研究成果の発表・報告や電力会社の配電部門の設計者や研究者との意見交換を十分に行うことができなかった。 研究成果として本研究のテーマである高圧配電線における多相フラッシオーバについて実験的検討およびシミュレーションに基づく各種パラメータの影響について、電気学会論文誌(査読あり)に2件の論文を掲載することができた(関岡昇三:「高圧配電線多相フラッシオーバに関する検討」、電気学会論文誌、電力・エネルギー部門、137巻12号,pp. 784-790 (2017-12))および(関岡昇三、岸海甫:「雷による高圧配電線多相フラッシオーバの実験的検討」、電気学会論文誌、電力・エネルギー部門、139巻7号,pp. 487-493 (2019-7))。その他に国内外の学会において口頭発表を行った。これらによって当初の研究計画予定の項目について、ほぼ実施することができた。 令和元年に電力技術の普及発展を目的として設立されたCIGREにおいて新たにWGを設立した。このWG設立には上部委員会における配電担当のRegular Memberとして設立を主導した。このWGでは本研究成果をアピールするとともに日本の配電技術の世界的な貢献も目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の成果を高圧配電線耐雷設計に適用するために各種学会の活動とそのための実験結果の整理を実施する。そこで、電気学会「高圧配電線耐雷設計の技術変遷と合理化に向けた題に対する調査専門委員会」の後継委員会である「高圧配電線雷リスクマネジメント手法の構築に向けた課題調査専門委員会」では電力会社10社の配電担当の設計運営を行う技術者や研究者が参加するため、日本での活動として特に重点を置く。また、海外での学会活動としてはCIGRE(国際大電力会議)において令和元年に設立した高圧配電線に関するWorking Group C4.57 “Guidelines for the estimation of overhead distribution line lightning performance and its application to lightning protection design scope”に研究成果を反映させていく。本研究で実施した実験結果およびフラッシオーバモデルはCIGRE WGにおいても注目されており、国外への貢献に向けて取りまとめを行う。 本研究における課題に対する成果は当初の目的を達しているので、本研究では新たな課題への取り組みは行わないこととする。CIGRE WGにおいて令和2年に2回目の会合をonlineで実施した。WG委員へのアンケート結果を基に世界の配電線の耐雷設計の調査を行い、その取りまとめを行う。本研究成果を適用するための情報となっている。さらに、WGに本研究において実施したがいしのフラッシオーバ特性の測定結果をまとめて提出ことにする。海外では商用電圧や接地系が異なることから、がいしのフラッシオーバ特性が異なると考えられる。CIGRE WGの活動においてフラッシオーバモデルの一般化を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、学会活動が停止またはweb会議になったため、次年度の旅費交通費に充当する。
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