2018 Fiscal Year Research-status Report
InN/GaN短周期超格子による窒化物半導体レーザー導波光制御構造の高機能化
Project/Area Number |
17K06360
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
今井 大地 名城大学, 理工学部, 助教 (20739057)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 窒化物半導体 / 1分子層InN / 短周期超格子 / 分光エリプソメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、通常のInGaN混晶に対し大きな屈折率と、コヒーレント厚膜積層が可能な優位性をもつ擬似InGaN混晶により、窒化物半導体レーザーの新しい導波光制御構造の提案と実証、更にはその素子応用にむけた基盤的技術の開拓を行うことを目的としている。最重要課題となるのは、InN/GaN層厚比と1分子層InN面内被覆率の変調による屈折率制御と、コヒーレント厚膜積層制御を両立した、擬似InGaN混晶の構造・物性制御方法の構築であり、まずは従来のInGaN系半導体レーザーで閾電流密度が増大し始める発振波長460nmを目標に、擬似InGaN混晶により構成される光導波構造の、閾電流密度低減と発振波長の長波長側拡大に対する有効性の実証を目指す。 30年度は29年度に引き続き、擬似InGaN混晶における光学定数の解析に取り組んだ。また新たに分子線エピタキシー(MBE)法による結晶成長に取り組み、本学においてInN/GaN短周期超格子の構造制御を行うための準備を進めてきた。光学定数の解析には分光エリプソメトリーを用い、六方晶ウルツ鉱構造に起因するエネルギーバンド構造を考慮した誘電関数モデルを用いて、GaN、GaInN、AlInNなどの窒化物系材料において、実験的に得られた擬誘電関数スペクトルを精度よく再現し、光学定数を導出できることを確認した。また当初の有機金属気相成長法による構造作製について予定を変更し、MBEによる結晶成長を開始した。MBEについては装置の立ち上げを行い、超格子構造作製の基本となるGaN結晶の成長条件の最適化までは概ね完了した。次年度はMBEによる構造制御方法の開拓を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度より、InN/GaN短周期超格子の構造制御方法と、それによる物性制御方法の解明に特に注力し、目標到達に向けて研究を進めている。H30年度は、①H29に引き続きInN/GaN短周期超格子の屈折率および消衰係数の解析、②MBE法による超格子構造制御方法の開拓に取り組んだ。 ①InN/GaN短周期超格子の屈折率および消衰係数の解析 分光エリプソメトリーにより得られる擬誘電関数スペクトルの解析から光学定数の導出を試みている。前年度までに、表面、界面ラフネスおよび基礎吸収単近傍の励起子吸収を考慮した誘電関数モデルを用いて、GaN系材料において吸収端近傍から低エネルギー側の領域にかけての解析を行うプログラムの構築および解析は完了していた。今年度は解析の精度を上げるため、さらに高エネルギー側に存在する状態密度特異点も考慮した誘電関数モデルを採用し、本学にある分光エリプソメトリーの測定範囲全域でスペクトル解析が可能となるよう解析プログラムを改良した。これによりGaNをはじめGaInNやAlInNといった混晶においても擬誘電関数スペクトルをこれまでより精度よくフィッティングできることを確認した。次に擬似InGaN混晶に本モデルを適用して解析を試みた。ここでは擬似InGaN混晶を、数十から数百周期の超格子層ではなく、一つの混晶層が存在するとしてモデルを単純化し、その擬誘電関数スペクトルの解析に取り組んだ。しかし、最適なフィッティングを得るまでには至っていない。要因として、超格子ミニバンド分散がスペクトルに影響していること、またInN/GaN超格子の積層周期や1分子層InNの被覆状態の不均一性が影響している可能性などが考えられる。 ②MBE装置の立ち上げに取り組み、GaNやAlNなどの主要二元化合物の結晶成長を安定して行うことが可能となった。次年度は超格子の構造制御プロセスの開拓を推し進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画では2年目以降は素子構造の作製および素子動作特性の評価に重点を置いていた。一方で、InN/GaN短周期超格子や1ML-InNの基礎的物性の解明に注力することが、今後素子設計指針を明らかにする上で重要であり、昨年度より超格子構造の制御とそれによる物性制御方法の解明に特に注力してきた。次年度は引き続き、擬似InGaN混晶における光学定数の解析に取り組む。誘電関数はエネルギーバンド構造を反映し、擬似InGaN混晶の場合、超格子特有のエネルギーバンド分散関係がこれに影響している可能性が考えられる。そこでエネルギーバンド構造を光学的に評価し、そのエネルギー構造の解明に取り組む。この際、まずはその基本構造である厚膜GaN中に埋め込んだ1分子層InNにおけるエネルギーバンド構造の解析を行う。また当初の計画にあるように、擬似InGaN混晶の光ガイド層適用を念頭に、バンド端近傍のエネルギー広がりや、バンド端以下の電子状態について評価し、通常のInGaN混晶光ガイド層に対する光吸収損失低減の可能性について明らかにする。次にMBEによる構造作製プロセスの開拓に取り組む。まずは厚膜GaN中に1分子層InNを埋め込んだ構造を再現することに取り組み、それが完了次第、GaNの薄膜化を進め、擬似InGaN混晶の構造制御に取り組む。以上の物性評価および構造制御を推し進めた上で、1ML-InNおよび擬似InGaN混晶の基礎的物性の解明に基づく本研究提案の光導波構造による素子動作特性向上の可能性について総括する。
|
Causes of Carryover |
30年度の予算計画については概ね計画通りであるが、少額の残額が発生した。
|