2017 Fiscal Year Research-status Report
CLT(直交集成板)を用いた既設橋梁の床版補修技術の開発
Project/Area Number |
17K06514
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
佐々木 貴信 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (00279514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 龍 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (00626955)
後藤 文彦 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10261596)
林 知行 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (60370285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CLT / ラッピング / 床版 / 橋梁補修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、既設橋梁の床版取り替えにおいてコンクリート(RC)床版の代替として、新しい木質材料であるCLT(直交集成板)の可能性を検討し、これを実用化するために、屋外使用環境下でのCLT の耐久性付与(防腐)技術の開発と、防護柵の設置方法の技術開発を進めた。防腐処理技術は前例のないシート系材料やポリマーセメント等でラッピングする方法を検討し、防護柵の設置ではCLT床版に一般的な防護柵が取り付けられるような方法を検討した。29年度は①ラッピング処理方法の開発、②防護柵設置方法の検討、③実橋の補修設計の3つのテーマに関する研究実施計画に沿って以下の通り研究を進めた。 ①については、CLTをFRP シートによるラッピング加工や、ウレタン系塗料、ポリマーセメント等のコーティング材料などで被覆処理した複数の試験体を作成し、これらの耐水性能を評価することを目的とした乾湿繰り返し試験および浸漬試験を実施した。乾湿繰り返し試験では、ラッピングした試験体では重量変化は全く認められず、ウレタン樹脂やポリマーセメントで被覆した場合も重量変化率は0.25%~1%程度と僅かであった。これらの試験体を水槽に140日間浸漬した浸水試験では、無処理材では約45%重量が増加したのに対し、被覆処理では10%以内の上昇に抑えられ、ラッピング加工ではほぼ完全に防水することができた。 ②については、CLT 床版に防護柵を設置するためのコンクリート地覆の固定方法の検討を行った。CLT床版の上面にラグスクリューのネジ部を打ち込み、スタッドジベルのように突出した部分にコンクリートを打設することで、実大の部分試験体の製作を行った。 ③については、秋田県内の農道橋の補修工事においてCLT床版の採用を検討する機会が得られたため、これを対象とした設計を行い、実際に、ポリマーセメントによる被覆処理したCLT床版を用いた施工を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CLTを用いた既設橋梁の床版取り替え工法の実用化を目指し、CLT の耐久性付与(防腐)技術の開発と、防護柵の設置方法の技術開発を行うこととし、29年度は①ラッピング処理方法の開発、②防護柵設置方法の検討、③実橋の補修設計の3つのテーマに関する研究実施計画に沿って以下の通り研究を進めた。 ①については、CLTをFRP シートによるラッピング加工や、ウレタン系塗料、ポリマーセメント等のコーティング材料などで被覆処理した複数の試験体を作成し、これらの耐水性能を評価することを目的とした乾湿繰り返し試験および浸漬試験を実施した結果、性能の差はあるものの、ラッピング加工や塗膜系材料による被覆処理の耐水効果を確認することができた。また、研究期間中にCLT床版を用いた3件の橋梁工事が秋田県内で計画され、ここで検討したFRPによるラッピングおよびポリマーセメントによる被覆処理が採用されるに至ったことは特筆すべき点である。 ②については、第一段階として計画したCLT 床版とコンクリート地覆の固定方法の検討を行った。次年度に実施する強度試験に供する実大の部分試験体の製作を計画通りに行うことができた。 ③については、秋田県内の農道橋の補修工事においてCLT床版の採用を検討する機会が得られたため、これを対象とした設計を行い、研究期間中に実施工が行われた。道路橋に限らず、林道橋や農道橋も対象として管理者の情報収集も行った結果、いくつか補修設計の対象が抽出された。 以上より、何れに計画も順調に進展しているが、上記の①、③については得られた成果を研究期間中に実証する機会まで得られたため、全体として当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進展しているため今後も29年度と同様に、①ラッピング処理方法の開発、②防護柵設置方法の検討、③実橋の補修設計の3つのテーマに関する研究実施計画に沿って研究を進める。 ①については、29年度の評価から選定した数種類の材料でラッピング処理や被覆加工した実大サイズのCLT を対象に、曲げ疲労試験を行う。これにより、ラッピング材料のひび割れや剥離などを観察し、耐久性を評価する。 ②については、29年度に製作した試験体の強度試験を行い、接合部のせん断力や引き抜き耐力を検証する。試験結果はFEM解析の結果等と比較して評価すると共に、防護柵設置基準に基づく要求性能を満足しない場合には、課題点を抽出し固定方法の構造を再度検討し、解析、実験を繰り返す。 ③については、研究期間中に得られた補修対象となる橋梁を想定して、CLT 床版を用いた補修設計を行い、構造解析および設計図面の作成を行う。また、設計図面から材料費の積算を行い、施工費用も含めたコスト試算を試みる。これらの資料は管理者へ提供すると共に、講習会等での情報発信を行う。
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Causes of Carryover |
29年度に研究分担者の行う計画であった既設橋梁の調査が早期の積雪のため実施できなかったため、この調査を次年度の雪解けを待って実施することとした。このため、この調査に係る費用を次年度に使用する必要が生じた。
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