2018 Fiscal Year Research-status Report
プレテンションPC橋の火災被災後の健全度評価と補強設計法
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17K06520
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 晋 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30168447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プレテンションPC桁 / 加熱試験 / 最高受熱温度 / 爆裂 / 残存耐力 / 残存プレストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,平成29年度に製作したPC桁8体のうち,2体の供試体の加熱試験(最高温度1100℃,30分)を行い,そのうちの1体に対して静的載荷試験を実施した。また,次年度実施予定の加熱したPC桁の疲労試験結果と比較検討を行うため,加熱しないPC桁の疲労試験を実施し,その性状を確認した。 加熱時に桁下面の一部が爆裂によりはく落し,PC鋼材が露出したため,その個所の受熱温度は900℃近くまで上昇したが,爆裂が生じなかった箇所の最高受熱温度は平均295℃であり,昨年度実施した熱伝導解析結果(約260℃)よりも若干大きな値となった。これは熱伝導解析では周囲のコンクリートの爆裂によるはく落の影響を考慮していないためであり,その影響を適切に考慮することで精度良い解析につなげることができると考えられる。 加熱したPC桁では,爆裂した箇所のPC鋼材強度が900℃程度の高温履歴を受けた影響で低下し,最終的に破断したため,曲げ耐力の実測値が加熱しないPC桁と比較して約37%低下した。高温履歴によるプレストレスの減少ならびに付着強度の低下のみを考慮した昨年度の解析では,その減少率は14%程度であったが,PC鋼材の強度低下の影響が大きいことが明らかとなった。Eurocodeを参考にして,PC鋼材の強度低下を考慮した計算を実施した結果,最大耐力を安全側に推定できたことから,PC鋼材の最高受熱温度を熱伝導解析で求める際に,爆裂によるかぶりコンクリートのはく落の影響を考慮することが重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1100℃での加熱試験を終了し,加熱したPC桁の静的載荷試験も終了した。加熱したPC桁の疲労試験は未着手であるが,加熱しないPC桁の疲労試験は終了しており,比較の対象となるデータの収集は万全である。 熱伝導解析やプレストレスの減少・付着強度の低下を考慮した解析のモデルはすでに一定レベルの妥当性が確認されており,爆裂の影響をどのように組み込んでいくかが次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,残りの4体のPC桁に対して最高温度を700℃に設定した外部火災曲線による加熱試験を実施し,最高温度の違いが残存耐荷性状に及ぼす影響を実験的に検討するとともに,そのうち2体を鋼板接着により補強し,その効果について確認する。 また,実験結果を熱伝導解析結果や残存耐力解析結果と比較することにより,精度良い解析結果が得られるよう,その手法の改善を試みる。 これらの結果を総合して,火災被災後のプレテンションPC桁の健全度評価手法および適切な補強設計法の提案を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも物品費・旅費の支出が少なかったことが理由である一方,実験補助に要する謝金が当初より多くなっている。平成31年度は5体のPC桁の加熱・載荷試験を予定しており,実験用物品費,人件費・謝金をメインに使用予定である。
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