2017 Fiscal Year Research-status Report
構造物の燃焼解析と精緻な風況解析を連成した市街地火災解析法の構築
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17K06541
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
長谷部 寛 日本大学, 理工学部, 准教授 (60366565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 卓史 日本大学, 理工学部, 教授 (50126281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 火災シミュレーション / 木材燃焼実験 / 放射解析 / 自作風洞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,無風時および有風時の燃焼実験,その精度を向上させるための風洞装置の自作,そして放射解析法の構築を試みた。 研究計画立案時には建築研究所の火災風洞を使用して有風時の実験を実施する計画を立てていたが,スケジュールの問題で使用できる目処が立たなかったことから,代わりに消防関係の火災訓練施設を借用して実験を実施した。ただし,風洞がない施設であったことから,送風機を用いて無風時および有風時の燃焼実験を行った。無風条件下の放射熱の影響およびそれに応じて生じる延焼の速度を得ることが出来た。有風時のデータは延焼速度が文献値に比べて遅いものであった。これは送風機の生成する気流の一様性に起因すると考えられたため,有風時の燃焼実験が可能な簡易的風洞装置を自作した。 自作風洞は,屋外や学外の施設での使用を念頭に置き,PCのファンを利用した軽量かつ低電力の仕様とした。送風機に比べて一様かつ乱れの少ない気流を生成することができたので,今後は前述の施設において,再度有風時の燃焼実験を実施し,放射解析の検証データの取得を行う予定である。 あわせて平成30年度に予定していた放射解析法の構築にも取り掛かった。隣接して配置された木材の延焼シミュレーションを実現するため,構築している火災シミュレーション法に放射熱計算プロセスを組み込んだ。これまでは周辺の気流温度が高まることのみで延焼過程を表現していたが,放射伝熱による効果で隣接する木材が燃焼する結果を得た。ただし,燃焼実験で得られた延焼速度よりも解析で得られた延焼速度が若干遅く,計算プロセスの修正が必要である。 9月には火災研究者の集う国際会議に参加し,構築中の解析法に関する研究発表を行った。また,3月には風関連災害に関する国際ワークショップに参加し,同じく解析法の発表を行った。火災および風の両方の研究者と今後の課題について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり無風時および有風時の燃焼実験を実施した。ただし,当初計画していた火災風洞での実験ができず,他の施設を使用したことで,有風条件下のデータの精度が想定よりも低かった。そのため,当初の計画では予定しなかった自作風洞装置の制作を行うことになり,その分進捗は若干遅れた。ただし,使用スケジュールがタイトな火災風洞以外に有風時の燃焼実験が可能な施設を確保できたことから,今後,このスケジュールの遅れを取り戻す事は十分可能と考えている。 一方で,計画時には本年度に予定していなかった放射解析に取り掛かり始めた。平成30年度に計画していた内容全てを終えたわけではないが,その一部を構築した点は予定よりも先行したと判断する。以上の点から総合すると当初の計画程度の進捗状況と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
有風時の燃焼実験で得られたデータ精度に課題が残ったことから,自作風洞装置を使って再度データ収集を行う。実験方法に関しては,従来実施していた方法と大きく変える必要はないと考えているが,燃焼材料として使用する木材の湿度(含水量)の僅かな差異が,燃焼度合いに大きく影響することが確認できたため,実験材料の湿度管理はこれまで以上に慎重に行うこととする。 なお,平成29年度に得られたデータであっても,構築する解析法の初期段階の検証には使用できると考えている。そこで,計画通り放射の影響や飛び火を考慮した解析法の構築を行い,当面は平成29年度のデータとの検証を進める。新たなデータが取得できた段階で,より精緻な検証に取り掛かることとする。
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Causes of Carryover |
当初計画していた建築研究所の火災風洞が,スケジュールの関係から使用できず,消防関係の施設を借用して実験を行った。その施設借用料に大きな差異があり,その余剰分を用いて自作風洞制作に取り組んだ。年度内に自作風洞を用いた再実験を行う予定であったが,風洞制作に時間を要したため,実施に至らなかった。再実験を実施する前に材料購入を考えていたが,実施に至らなかったため,次年度使用額が生じた。この余剰は,次年度に実験を行う際の材料費に充てる予定である。
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