短時間強雨の増加に対応した盛土構造物の安定性評価に関する基礎的研究

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K06555
• Research Institution: Yamaguchi University
• Principal Investigator: 森 啓年 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (20355803)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中田 幸男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90274183)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 河川堤防 / 浸透 / 降雨 / すべり

Outline of Annual Research Achievements

平成28年8月の台風15号に伴う降雨により，筑後川の河川堤防では天端法肩からの深い表のり面すべりが発生した．この原因は天端舗装の排水不良により，縦断方向からも排水がすべり箇所に集中したためと考えられ，同様の被災は全国の河川堤防で頻発している．そこで，本研究は、浸透水のみでなく雨水集中に伴う表流水の影響も考慮して、盛土構造物の大規模な変形の発生過程をシミュレーション可能な解析プログラムの開発を目的として実施している。
平成29年度は降雨と天端舗装からの雨水集中による河川堤防の深いすべり発生への影響を，植生の根茎の影響や基礎地盤を含めない単純な土層構成の模型実験により把握した．その結果から，筑後川と同様に降雨の法面への均質な浸透のみでは，深いすべりが起こる可能性は低く，天端舗装からの排水が集中することにより，大規模な変形が発生することが示唆された．
また，非定常飽和不飽和浸透流解析と円弧すべり解析を用いて，実験結果の定量的評価を試みた．その結果，実験と同様に降雨のみでは深いすべりが発生する可能性は低いことが明らかになった．次に，天端舗装からの排水の集中を降雨に換算して与えたところ，実験における深いすべりの発生の有無を再現できた．さらに，研究代表者が開発した粒子法（SPH法）の解析ソフトウェアに，非定常飽和不飽和浸透流解析により求めた間隙水圧分布を与えたところ，実験で観察された深いすべりを伴う河川堤防の変形状況をよく再現することができた．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画通り，単純な土層構成の模型実験を実施済みであり，河川堤防の降雨と天端舗装からの雨水集中による深いすべりへの影響を把握することができた．また，非定常飽和不飽和浸透流解析と円弧すべり解析，SPH法を用いた実験の定量的評価についても，順調に進んでいる．
以上から，「おおむね順調に進展している」と評価した．

Strategy for Future Research Activity

今後，植生の根茎の影響や基礎地盤も含めた河川堤防の土層構成の影響についても実験し，より現実の河川堤防に近い条件での挙動を把握する予定である．また，非定常飽和不飽和浸透流解析，円弧すべり解析とあわせて，SPH法によりそれらの実験結果の定量的評価も実施する予定である．