2017 Fiscal Year Research-status Report
都市街区スケールとメソスケールをつなぐ大規模数値計算
Project/Area Number |
17K06570
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲垣 厚至 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (80515180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 直幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (50614484)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大規模数値計算 / LBM / LES / 大気境界層 / 都市街区 / 浮力 / 熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市大気境界層内では,街区の流れ(1~100 m)から熱対流構造(鉛直1~2 km、流れ方向数10 km)まで,数オーダー大きさの異なる特徴的な擾乱が混在している.本研究目的は,都市の微気象過程とメソ気象の間をつなぐ物理体系の構築であり,そのためには上記マルチスケールの物理現象を俯瞰した視点が必要である.そのために,熱を考慮した格子ボルツマン法LESモデルを開発し,街区スケールから,都市大気境界層全体をシームレスに解析する大規模計算を実施する.計算結果を基に,乱流統計量やその空間構造の普遍性,あるいは街区形状との関係について検討する. 本年度はCUDAで作成された格子ボルツマン法LESのコードに熱による浮力の効果を導入した.本モデルを用いて,不安定成層下における流れ方向に発達する乱流境界層のテスト計算を実施した.底面には立方体で表現された粗度群を置き,それらを陽的に解像する格子間隔を用いた.熱の境界条件としては,一定量の顕熱フラックスを全ての壁面及び床面から一様に与えた.得られた計算結果から,粗度群が作る地表面抵抗が支配的な内部境界層と,浮力が支配的な熱対流が混在した流れが形成されていることを確認した. 今後の方針として,本モデルを用いた実都市大気境界層の大規模計算を実施し,大気境界層の熱対流と,都市建物抵抗の相互作用について検討を行う. また,実都市への適用に先立ち,実都市街区内の微気象観測を実施し,バリデーションのためのデータ(風速,気温,湿度,放射量)を取得した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は格子ボルツマン法LESモデルに熱による浮力の効果を導入した.熱の移流に関しては2次精度の差分法で計算し,運動量に関してのみ格子ボルツマン法で計算する.このモデルを用いて,不安定成層下で流れ方向に発達する乱流境界層計算を実施した.底面には立方体で表現された建物状の粗度群を置き,それらを陽的に解像する格子間隔での計算を実施した.熱の境界条件として,壁面より一定の顕熱フラックスを与えた.結果として,底面摩擦が支配的な内部境界層と,それを包括する浮力駆動の熱対流が混在した流れが形成されていることを確認した.また,今後実施予定の実都市大気乱流の計算結果のバリデーションのために,都市街区内の現地観測を実施し,各種微気象データ(風速,気温,湿度,放射量)を取得した.
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Strategy for Future Research Activity |
東京都臨海部を対象とした水平10 km規模の領域を,建物を解像できる格子幅で分割した,実都市大気境界層の大規模計算を実施する.熱の境界条件に関しては,別途準備した都市熱収支計算のデータベースを用いる.計算結果のバリデーションについては昨年度実測した地上観測データを用いる.積分時間に関して,堅固な時間平均統計量を得るため30分以上の平均化時間を確保する.計算事例として,夏季,冬季における日中のシミュレーションを実施する.得られた結果より,大気乱流と都市建物の関係について検討する.
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Causes of Carryover |
昨年度はモデル開発が遅れたため外部発表を次年度に見送りました.そのため本経費は次年度の旅費として計上します.
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