2018 Fiscal Year Research-status Report
森林の管理状態が河道災害ポテンシャルへ与える影響評価に関する研究
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17K06578
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
武藤 裕則 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (40263157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 隆雄 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (40280466)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 総合土砂管理 / 森林 / 土砂生産 / 流砂 / 河道災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
富田川流域の森林の戦後の変遷と現状について,地元で長年森林管理に携わり自身も森林所有者である2名の方にヒアリングを行い,前年度に実施した航空写真や森林管理図等の関係資料に基づき整理した基本的情報の裏付けを行うと共に,西谷川および熊野川谷川流域の森林特性の富田川流域における代表性について検討した.加えて,降水量と流出土砂量の関係性を検討した国内外の約100編の論文を整理し,流出土砂量に影響を与える要素としてこれまで取り上げられてきた変数に関してそれらの寄与度・重要度を抽出した. 一方,西谷川および熊野川谷川流域では引き続き降水・流水・流砂・地下水位の総合観測を継続すると共に,西谷川においては前年度に試験設置した流砂量自動計測装置を改良し新たに設置しなおした.先行研究に加えて観測データの蓄積が進んだ結果,期別連続雨量と流出土砂量の関係性がより明確となり,両者の関係は流域の別にかかわらず自然定数を底とする指数関数で表されること,同じ流域であっても前年度に指摘した期別連続雨量に関する閾値を境界としてその前後で指数関数の係数が異なること,指数関数にかかる係数αが流出土砂量の大まかなオーダーを示す可能性のあること,などが明らかとなった. さらに,降雨~流出モデルにおいて前年度に決定されたパラメータ調整結果の有効期間について,2014年以降の複数の流砂発生イベントを対象に再現計算を行ったところ,2015年夏季に発生した比較的大規模な出水イベント以降については,再度パラメータ調整が必要なことが示唆された.また,流砂モデルについて水山による改良型芦田・道上式を新たに組み込み,2014年における主要な流砂発生イベントを対象に再現計算を試み,その精度について検証を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
富田川流域全域の森林特性とその変遷について,数値的な整理はほぼ完了した.現在,西谷川および熊野川谷川流域の森林特性の富田川流域における代表性を表しうる指標の選定について作業を進めている.また,これらの検討に加えてヒアリングや現地踏査を通じて,当初本研究で流砂量観測プロットを設置する予定であった「管理が行き届いた針葉樹林」について,近辺には適当な対象流域が存在しないことが判明したため,研究分担者が別途実施している研究サイトでの観測実施可能性も含めて今後早急に検討を進める. 観測機器を設置した西谷川および熊野川谷川流域においては,当初計画した観測データの取得をほぼ達成した上で,前年度に開発した流砂量自動計測装置に関しては,問題となった計器周辺への細粒土砂流入防止策を施し,実験室内での試験的な動作確認は実施した.しかしながら2018年は河川水位が高い状態が続いたため,計測機器の実河川への設置が出水期後となり,データの取得と装置の作動状況の確認には至らなかった.装置は設置継続中であり,改めて2019年中のデータの取得を目指す. 降雨~流出モデルに関しては,パラメータ調整の迅速化と精度向上を目指して,2018年より新たに西谷川の支流2箇所に水位計を設置し,本川に加えてそれらのデータも加えたパラメータ調整を行った.一方流砂モデルについては,山地河川を対象とした改良型芦田・道上モデルの適用性について検討を行い,ある程度の再現性が得られることを確認したが,降雨イベントによっては標準型芦田・道上モデルより精度が劣る場合もあり,他流域への適用性も含めて引き続き課題となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
富田川流域全域での俯瞰的土砂流出量の推定を目指して,西谷川流域及び熊野川谷川流域における観測結果を全流域へ外挿する手法について検討する.また,森林の管理状態として当初想定していた,管理が行き届いていない針葉樹林(=西谷川流域),広葉樹/雑木樹林(=熊野川谷川流域)に加えて,管理がなされた針広混交林での観測プロットを,新たに徳島県内に設ける.新設プロットでは,これまでのピットを用いた流砂量観測が困難であることが予想されるため,間接的方法による新たな流砂量観測手法の開発についても検討する.降水・流水・流砂・地下水位の総合観測はこれら3流域で実施し,森林状態の違いが流出土砂量に与える影響について観測結果からまとめる.特に西谷川流域においては,本研究により開発された流砂量自動計測装置について,その適用性・現地採用性を検討する. 降雨~流出~流砂モデルについては,既に開発された降雨~流出モデルを2015年以降の洪水イベントや熊野川谷川流域に適用することで,その汎用性を検討する.また,2018年に設置した支川の水位計データを活用し,地質や森林の管理状態を反映した精緻なパラメータ調整を実施した上で,これらの影響が解析結果にどのように反映されるのかをまとめる.一方流砂モデルについては,より広範な粒径と運動形態の取扱いを可能とするモデルへの置換・改良を引き続き試み,当初想定した簡易ではあるが現実的な精度を有する降雨~流出~流砂モデルの構築・提案を目指す.
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記したように,2018年は河川水位の高い状態が約4ヶ月にわたって継続し,現地での測量や新たに開発した流砂量観測装置の再設置が困難だったため,現地調査のための出張旅費の支出や測量のための役務費が予定より下回った.また,流砂量観測装置の改良にあたっては,中古品や再利用資材の活用により経費を節約した.未使用額については,新たな観測プロット設置のための準備の他,2019年9月に予定されている国際学会での発表のための渡航費に充当する予定である.
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Research Products
(2 results)