2018 Fiscal Year Research-status Report
ルーズホール設置型ローラー支承の3次元動的特性の解明と保有耐震安全性の評価
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17K06632
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
島田 侑子 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90586554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 摩擦係数 / 振動実験 / 屋根定着部 / 速度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
RC造架構と鉄骨造屋根で構成される体育館において,東日本大震災や熊本地震でコンクリート落下被害が見られた.これらの被害に関しては,屋根のベースプレートとRC架構上部のモルタル間の摩擦力が地震下でどのように作用しているのか,影響があると考えられる.屋根の定着部は,一般的に露出柱脚と同様に設計されるが,ベースプレートとモルタル間に働く垂直荷重は,露出柱脚よりもかなり小さい.既往の研究では.露出柱脚の条件下において,黒皮付き鋼板とモルタル間の動摩擦係数の速度依存性が明らかとなったが,屋根のベースプレートとRC架構上部のモルタル間でも同様の動摩擦係数の速度依存性が生じるか不明である.そこで今年度は,既往の研究の露出柱脚の実験を基に,鋼板とモルタル間の摩擦係数に関する振動実験を行う.実験パラメータは鋼板の表面処理(黒皮,赤錆面,ラッカー塗装面),振動の周波数,速度を設定した.また,地震等により鉄骨屋根に面外変形や曲げモーメントが生じた場合,その下部のベースプレートがモルタルに対して傾きが生じて摩擦係数が小さくなることが考えられる.よって上記の各表面処理において,鋼板の傾きを変えた場合の検討も行った. 実験結果より下記のことが示された. (1)すべり速度ピーク値での,それぞれの動摩擦係数を以下に示す.黒皮付き鋼板では,0.2 ~0.25,赤錆付き鋼板では,0.25~0.3,ラッカー塗装した鋼板では,0.15 ~0.2であった. (2)黒皮付き鋼板の場合,すべりの最大速度が100 mm/s以下の場合は,速度依存性は弱く,最大速度が100mm/sを超え,速度の上昇を伴い線形的に摩擦抵抗が低下した. (3)黒皮付き鋼板の場合,ベースプレートに傾きがついた場合,傾きがない場合よりも摩擦係数が0.4以上となり,大きくなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初から今年度は鋼とモルタル間の動摩擦力を検討することを予定していた.振動台の容量ややや不足していたため,予想よりも小さい試験体となったことや,周波数や速度の設定が予定していたより低い範囲で実施せざるを得なかった.また,モルタルがやや強度の強いものであったため,既往の研究で実施していたような鋼板の表面凹凸による掘り起しなどの再現はできなかった.しかし,鉛直荷重が軽い場合でもある程度の速度依存性が発生していること,その限界値が露出柱脚とは異なる傾向にあること,ベースプレートに傾きが生じた場合の摩擦性状の違いを把握することができたため,おおむね順調であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は海外にて研修中であるため,定着部の載荷実験の実施に向けて有限要素解析および骨組解析を実施し,実験で予定している二方向載荷をどのように実施するのがよいか,二方向載荷による影響がどのように生じるのか,検討する. また主に有限要素解析により,今年度実施した鋼板とモルタル間の摩擦性状に関して,主にモルタル強度が低い場合の破壊も含めて検討する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は当該年度に実施した摩擦係数用の振動実験が予定より小規模であったため,予算が余ったことが主な原因である.振動台の使用スケジュールからして試験体を後から追加することは厳しい状況であったことと,当初予定していたパラメータは一通り実験できたことから,次年度に繰り越すことにした. また,翌年度に使用する解析用のPCも購入したことにより,次年度は解析による分析と,定着部載荷実験の追加試験体を検討する予定である.
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