2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Land Use Planning Method Considering Flood Control Capability by Farmland
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17K06707
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
渡辺 公次郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (30372717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農地 / グリーンインフラストラクチャ / 洪水調整機能 / 防災 / 土地利用 / Eco-DRR |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の目的は、農地の洪水氾濫調整機能評価手法の開発であり、具体的には、徳島東部都市計画区域を対象に、農地の転用要因分析(研究1)と雨水調整機能評価手法の開発(研究2)を行った。成果の一部は、「建築学会福島復興の環境都市計画の視点からの検証および災害復興準備に関する公開研究会(H30年3月)」報告集への投稿を行った。 研究1では、都市計画基礎調査で整備された2006~2012年の農地転用データ(位置)をGISにより分析し、土地利用規制(区域区分)、生活利便性(施設からの距離)、災害危険性(津波、洪水)の観点から、農地転用要因を明らかにした。対象地域では、利便性や災害危険性よりも、土地利用規制の方が転用に与える影響が大きいことが分かった。研究2では、この成果を基に、豪雨時に浸透、貯留せず、地表面に残る雨水量を推計した。雨量データと土地利用データを利用した簡便な推計方法を開発し、これを用いて、土地利用の変更、温暖化による雨量の増加を想定した場合の、地表面に残る雨水量を計算し、その結果と将来の高齢世帯分布との比較より、洪水リスクの傾向について考察した。温暖化により増加した雨量を処理するためには、農地の調整機能だけでは足りず、高齢世帯の居住地域にも洪水の危険性が高くなることが分かった。当初、研究2の内容を行う予定であったが、研究1により農地転用の傾向を把握することで、本研究の最終目的である洪水氾濫調整機能を踏まえた土地利用計画を考える上で、基礎的な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度の研究目的は、ほぼ達成できている。H29年度の目的は、農地の洪水氾濫調整機能評価手法の開発である。具体的には、徳島東部都市計画区域を対象に、農地の転用要因分析(研究1)と雨水調整機能評価手法の開発(研究2)を行った。 研究1では、都市計画基礎調査で整備された2006~2012年の農地転用データを基に、GISにより、転用要因を土地利用規制、生活利便性、災害危険性の観点から分析した。その結果、住宅への転用が最も多かったこと、市街化区域内の方が調整区域よりも転用が進んでいたこと、幹線道路、バス停、スーパーマーケットに近い農地ほど転用が進んでいたこと、洪水浸水および津波浸水エリアと農地転用との関係はなかったこと、低位地帯が転用から避けられている傾向にあったことが分かった。 研究2では、豪雨時に浸透、貯留せず、地表面に残る雨水量を推計した。雨水は、水田と側溝で一定量貯留され、水田、畑、森林、下水道整備区域で一定量浸透すると考えた。4次メッシュ別に、土地利用データ、側溝データ、下水道整備区域データを整備し、それらを用いて雨量から貯留量、浸透量を差し引いた残りを計算し、地表面に残る雨水量とした。この考え方を基に、土地利用の変更、雨量の増加を想定した場合の、地表面に残る雨水量を計算した。この結果と、災害に対する脆弱性が高いと考えられる高齢世帯の分布とを重ね合わせたところ、雨量が1.5倍になる場合、9割程度の高齢世帯が影響を受けることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、世帯と事業所の立地要因を組み込んだ市街化予測モデルを開発し、H29年度の成果と合わせて、農地や市街地の変化による洪水災害時の雨水調整機能を評価する。 具体的には、H29年度と同じ地域を対象に、世帯と事業所の立地行動、要因を分析し、将来の分布を予測するモデルを開発する。このモデルには、政策変数として土地利用、区域区分、災害危険性を組み込み、政策シミュレーションを可能にする。将来の予測値を基に土地利用を想定し、雨水調整機能を評価する。いくつかのパターンでこれを繰り返すことで、洪水被害を最小にする土地利用を考察する。
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Causes of Carryover |
大きくは次の2点である。1つ目は、データ作成補助謝金を予定していたが、都市計画基礎調査データの利用、市販データの利用、オープンデータの利用により、その必要がなくなったこと。もう1つは、現地調査を予定していたが、H29年度はデータ処理を中心に行い、現地調査はH30年度以降に変更したためである。残金は、消耗品の購入に充てる予定である。
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