2018 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な都市空間のための公私計画・マネジメント論の構築及びデザイン手法
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17K06731
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 圭二郎 金沢工業大学, 建築学部, 准教授 (00303850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上山 肇 法政大学, 政策創造研究科, 教授 (10712531)
菅原 遼 日本大学, 理工学部, 助教 (10755432)
市川 尚紀 近畿大学, 工学部, 准教授 (50441085)
坪井 塑太郎 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (80449321)
畔柳 昭雄 日本大学, 理工学部, 特任教授 (90147687)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公私計画論 / 公共空間 / 都市空間 / パーソナリティ / 共同的主体性 / 広場 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続きメンバーによる事例収集と情報共有を図った。とくに、公共空間(または公共的空間)の私的利用(行政の単一機関による空間管理ではなく、公共的空間の管理・運営・活動を巡って多様な主体の関与が見られる例)に着目した調査を実施した。 具体的には、2018年度からスタートした都市公園法及び関連法の改正に伴うPark PFIの文献調査・事例調査(南池袋公園、天王寺公園、水上公園)等)や、道路空間をめぐる社会実験の動きに関する文献調査・事例調査を行った。 また、公共空間を使いこなすべき主体のあり方の条件を検討するために、公共的空間の質的評価と個々人のパーソナリティとの関係について、アンケート調査(パーソナリティについてはBig Five尺度を用いた)と統計解析により調査・分析した。その結果、外のモノや人に対して関心を向け、それらとの交流を好む「外向性」をもち、同時に、それらに過度な影響を受けずに他者と共存しつつ自分の主体性を発揮できる内的な「誠実性」をもつ人は、公共的空間(オープンカフェ・広場・河川空間)の物理的・意味的「開放性」を高く評価する傾向があることがわかった。この主体の条件をここでは「共同的主体性」と呼び、その重要性を既往の言説も踏まえつつ指摘するとともに、そうした主体性を育む場として、都市内における公共的空間の可能性についても指摘することができた。 上記のような共同的主体性を育む場としての公共的空間、とくに「広場」の位置づけについては、西欧諸都市における「広場」の歴史的変遷とその都市的意義を、それを読み解くための独自の理論の構築を行いつつ記述した大谷幸夫の言説を踏まえつつ整理し理論的検討を行った。 メンバーそれぞれの研究成果は、日本建築学会大会(東北)で「水と緑の公私計画論」と題するセッションを立ち上げて対外的に発表するとともに関連する議論を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に引き続き事例調査とその整理を図るとともに、それらの結果を公私計画論として取りまとめるにあたって必要となる理論的検討を含めて実施することができた。具体的には、大谷幸夫の都市の歴史的変遷に関する分析結果や関連する言説を踏まえた「広場」の都市的意義に関する理論的検討、及び、都市空間(公共的空間)を使いこなしていくべき主体の側の条件についての調査研究を進め、一定の成果をあげることができた。これらは、当初予定していた事例収集とケーススタディに基づく公私計画論の理論化の検討とは別に、すなわち、単に収集した複数事例を分析・整理する中で帰納的に抽出される結果とは異なる視点から、公私計画論を原理的・理論的に位置づけていくための重要な視点・着眼点を得ることができ、重要な研究成果となった。また研究メンバーそれぞれの研究成果は、日本建築学会大会で1セッションを設けて集中的に発表・議論し、本研究の意義を対外的に問うことができた。 ただし、本研究の研究成果の書籍化については、目次構成のラフな検討は行ったものの、書籍の具体的な内容を固めて、出版に向けた具体的な手続きまで進めるには至らなかった。 以上から、本研究はおおむね順当に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、本研究課題の最終年度にあたる。したがって、今後は前年度に引き続き、6回/年程度の打合せ・議論の場で、これまでの事例調査・整理の結果と、本年度に実施した理論的検討の結果も踏まえ、これらを照らし合わせながら、公私計画論の理論的検討と都市空間における公私計画の具体的実践方策に関する分類・整理を行っていく予定である。 なお、本研究における公私計画論の理論的検討においては、本研究が「持続可能な都市空間」のために、長期的な視点で、公私計画の検討・実践の理論的な基盤となることも重視していることから、既存の法制度のみを前提とした枠組みに絞ることは必ずしも想定していない。しかし、近年の公私計画論に関連した都市空間活用(公共的空間の私的活用、私的空間の公共的活用(オープン化)等。例えば、河川占用許可準則改正やPark PFIの導入、道路の社会実験、都市再生特区等での官民や地域住民・団体等の多様な主体が連携した都市空間の一体的再開発・利活用等)の活発化やそれに対応した法制度的な動きについても押さえた上で、このような動きの中で、長期的に都市空間あるいは地域の持続性にもたらしうる影響や課題についても指摘しておきたいと考えている(例えば、多様な主体とその対等な関係による適切なガバナンスのもとで都市空間の運営がなされなければ、ガバナンス不全により運営が硬直化したり、一定の他者やある社会層を排除する管理思想になりかねない等)。 以上を踏まえると、本研究課題の実施期間内に書籍化・出版までを実現することは困難ではあるものの、研究課題の最終年度に向けて、メンバー間での議論を密にしながら成果の取りまとめを進めていくとともに、これまでの年度と同様に、対外的な発表と公開の場でのオープンな議論を通じて、本研究の成果の妥当性を確認しつつ、さらなる議論の深化と成果の質の向上を目指していく予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に492,111円の次年度使用額が生じていた(同一メンバーによる関連する研究テーマについて民間研究助成が得られたため)が、今年度の次年度使用額は369,649円であり、事例調査や研究成果の取りまとめ・発表の機会を含めて、鋭意研究を進めた結果である。 次年度は、当研究課題の最終年度であることから、現在の次年度使用額については、研究メンバーによる打合せの機会を密にするとともに、これまでと同様積極的に研究成果を発信していくために、論文投稿・研究旅費等に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)