2018 Fiscal Year Research-status Report
The origin of the separate structure and the space by the independent slender columns in the National Library in Paris
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17K06749
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Research Institution | Nagaoka Institute of Design |
Principal Investigator |
白鳥 洋子 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (00301838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アンリ・ラブルースト / パリ国立図書館 / サント=ジュヌヴィエーヴ図書館 / レンヌ大神学校 / 鉄構造 / 細い柱の空間 / 19世紀フランスの建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に収集した資料を元にパリ国立図書館大閲覧室に関する分析と考察を行い、その一部を「パリ国立図書館の装飾芸術の主題に関する考察:大閲覧室のメダイヨンに見られる人文学の叡智」、長岡造形大学研究紀要、第16号・2018、2019に纏めた。ここでは一連のメダイヨンのレリーフの分析を行い、その主題について論じた。レリーフの制作者を特定し、その主要人物であるアンドレ・ウーディネはラブルーストの生涯の理念を表した中央建築家協会の会員メダルの制作者であったことを明らかにした。加えて、中央書庫室の入り口への意識の集中や大閲覧室の芸術意匠の焦点について論じた。 見学調査においてはレンヌ、パリ、アテネにて研究活動を行った。レンヌ第一大学(旧レンヌ大神学校)では全体の構成や特徴、独立柱のある箇所とそれに関する構造の概要を把握し、ラブルーストの計画案と現状との比較参照を行った。レンヌ大学第一大学図書館は、昨年度から研究の協力をいただいている建築家ブルーノ・ゴーダン氏の設計による再生改修である。 パリでは主要な図書館で資料収集を継続し、同時にラブルーストと関連のある独立柱の空間を持つ建築の見学調査を行った。パンテオンではパエストゥムのオーダーの独立柱の空間であるクリプト(地下聖堂)、上層階と屋上、ドームの見学を行った。パレ・ド・ジュスティスでは主に大小のオーダーの採用と大空間に着目した。サン=ドニ=デュ=サン=サクルモン教会では屋根裏内部にて小屋組と平天井の仕組みについて現地調査を行うことができた。 アテネとその近郊では、彼がパエストゥムの神殿の復元研究で参照したパルテノン、プロピュライアなどのドリス式神殿の見学調査を行った。ヘファイストス神殿とアファイア神殿については考古学博物館から見学許可が下り、神殿内部の調査を行うことができ、石造天井、石組み、ナオスについて貴重な資料を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は現地の調査見学の機会に大変恵まれた。旧レンヌ大神学校、サン=ドニ=デュ=サン=サクルモン教会の屋根裏、ヘファイストス神殿の神殿内部など、様々な方面から見学の許可や好意の案内が得られたことが大きかった。レンヌ第一大学では夏季休暇期間にも関わらず、無事に調査見学を行うことができた。日本人研究者の訪問は初めてとのことであった。ラブルーストのオリジナルが尊重された同大学図書館は、パリ国立図書館改修計画の総責任者であるブルーノ・ゴーダン氏の設計である。 パンテオンは第3期の修復工事が終了したところであり、長い間、機会を待っていたクリプトや上層階を見学することができた。パレ・ド・ジュスティスはその機能がレンゾ・ピアノの設計による新パレ・ド・ジュスティスに移転したところであり、多くの箇所を見学することができた。現在、ドミニク・ペロー建築事務所がシテ島全体の再生計画を行っており、今後の工事により、主要な箇所を除き19世紀の部分が失われて行くことを勘案すると、往時のパレ・ド・ジュスティスを見る最後の機会となった。イポリート・ゴドの設計のサン=ドニ=デュ=サン=サクルモン教会ではロージェ・タルディ神父の好意により平天井の仕組みと小屋組を見ることができた。アテネとその近郊では、ヘファイストス神殿、アファイア神殿について考古学博物館から神殿内部の調査見学の許可が下り、石造梁、石造天井の仕組みとその状態、二重のオーダーなどについて貴重な資料を得たことは大きな収穫であった。 研究の成果は「フランス国立図書館の端緒、ルイ9世の図書館:シテ宮サント=シャペルの宝物庫と19世紀の建築」、長岡造形大学研究紀要、第15号・2017、2018、「パリ国立図書館の装飾芸術の主題に関する考察:大閲覧室のメダイヨンに見られる人文学の叡智」、長岡造形大学研究紀要、第16号・2018、2019などで発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究計画にも記載したようにイタリアでの見学調査を行う予定である。ラブルーストが在ローマ・フランス・アカデミー時代に訪問し、デッサンを残した建築において、パリ国立図書館やサント=ジュヌヴィエーヴ図書館との共通性が認められる建築や、細い独立柱の空間を持つ建築を中心に見学調査を行う。ナポリやポンペイ、パエストゥム、パレルモを始めとするシチリア島の諸都市など、南イタリアの建築については今日までの研究にて既に見学調査を行っている。次年度の見学調査ではヴェネチア、ラヴェンナ、リミニ、アンコーナなどのアドリア海沿岸の都市と、ローマとその近郊、フィレンツェなどの中部の都市を予定している。主に独立柱と分離構造の関係性とその空間性に着目して調査を行い、19世紀フランスの建築における細い独立柱の空間の源流を捉えていきたい。アドリア海沿岸の建築は同時のフランスの建築界では新鮮な存在であり、その観点からの新しい発見を期待している。 研究の最終の年度であることから、今日までの収集した資料を元に研究の成果を報告書として纏めて行きたい。1年目も2年目も特別な見学の機会や資料閲覧に恵まれ、貴重な資料を収集することができた。膨大な資料を纏める方法が課題であり、報告書の内容を熟考したい。
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Research Products
(1 results)