2019 Fiscal Year Research-status Report
The origin of the separate structure and the space by the independent slender columns in the National Library in Paris
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17K06749
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Research Institution | Nagaoka Institute of Design |
Principal Investigator |
白鳥 洋子 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (00301838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アンリ・ラブルースト / パリ国立図書館 / サント=ジュヌヴィエーヴ図書館 / 独立柱の空間 / 中世シテ宮殿のグランド・サル / イタリアの建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果の一部を「中世シテ宮殿のグランド・サルにおける独立柱の空間:その空間の消失と19世紀の再発見」(長岡造形大学研究紀要、第17号・2019、2020)に発表した。同稿では本研究で得られた資料を基に、中世シテ宮殿のグランド・サルと19世紀の建築家、芸術家との関係を明らかにした。グランド・サルの建造の経緯と概要、火災による消失、パレ・ド・ジュスティスのサル・デ・パ・ペルデュへの改修などの変遷の詳細をまとめ、次に、16世紀のジャック・アンドルーエ・デュ=セルソーの版画、19世紀のヴィオレ=ル=デュクの研究書、シャルル・メリヨンの版画など、グランド・サルに関する主要な芸術資料、研究書を概観し、19世紀に再びこの空間が脚光を浴びたことを明らかにした。さらに、中央軸上に独立柱を持つ空間的特徴、石造部の基本的構造、木造架構の軽やかな意匠など、建築的な特徴を分析し、考察を行った。最後にサント=ジュヌヴィーヴ図書館の独立柱の空間はこれらの19世紀の研究書や芸術作品より先に実現されたことを確認し、同図書館のさらなる先駆性を明らかにした。 「建築と室内空間の同時性:細い独立柱の空間」(日本インテリア学会会報、JASIS、no.64、2019/5/25)では、ル・コルビュジェの国立西洋美術館、パリ国際大学都市スイス館、北設楽郡の納屋、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、パエストゥムの第一ヘラ神殿など、自身と関わりのあった中央軸上に独立柱の空間を持つ建築を例に取り、その空間が持つ神秘性と普遍性について論じた。 現地調査においては、8月中旬から9月上旬にかけてイタリアへ赴き、ローマとその周辺、ウンブリア地方、トスカーナ地方、アドリア海沿岸の都市を中心にラブルーストがデッサンを残した建築について現地調査見学、資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は上記の論文に研究成果を発表した。次に8月中旬から9月上旬にイタリアへ赴き、ローマとその周辺、ウンブリア地方、トスカーナ地方、アドリア海沿岸の都市を中心にラブルーストがデッサンを残した建築について現地調査見学、資料収集を行った。ローマとその周辺では古代ローマとエトルリアの遺跡、一連の初期キリスト教聖堂、ウンブリア地方ではペルージアの都市門、アッシジのサン・フランチェスコ聖堂、アドリア海沿岸ではアンコーナのトラヤヌス帝の凱旋門、リミニのマラテスティアーノ寺院、ラヴェンナのサンタ・ポリナーレ・イン・クラッセ、ヴェネチアのサン・マルコ聖堂、トスカーナ地方ではフィレンツェの一連のルネサンス期の教会と近郊の修道院、ヴォルテッラの都市門などの現地調査見学と資料収集を行った。近年、イタリアでは以前は見学が困難であった箇所が見学可能となっている教会が増え、キオストロやクリプタなどを実際に確認することができたことも成果に繋がった。写真撮影の許可も得られ、関係者の方々からの好意に大変恵まれた。 今回の現地調査見学からはラブルーストのイタリア建築への視点について理解を深めることができた。エトルリアと古代ローマの建築と芸術、初期キリスト教時代、ルネサンス期の建築に見られる独立柱の空間と、連続アーチの横架材、連続クーポールまたは連続クロス・ヴォールトなどの石造天井にその特徴を見出せた。概して、パリ国立図書館の細い独立柱の空間の源流の一つが、イタリアの建築を独立柱の空間とクーポールなどが連続する石造天井との関係性を構造と建造の観点から分析する思考にあることを掴むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間に渉る現地調査見学と資料収集により、パリ国立図書館、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、レンヌ大学(旧レンヌ大神学校)、ラブルーストのパエストゥムの神殿の復元研究、ラブルーストが訪れたイタリアの建築に関して多くの有意義な資料を収集することができ、大変充実している。今後はこれらを整理し、分析を行う必要がある。サント=ジュヌヴィエーヴ図書館の図版は絵画的魅力が大変高く、資料集として纏めて行きたい。さらに、各図版を現状と参照しながら解説を行う予定である。 パリ国立図書館に関しては、同図書館改修計画の総責任者、建築家ブルーノ・ゴーダン氏からいいただいた図版資料と「ラブルーストの間」の修復建築家、ジャン=フランソワ・ラノー氏とのインタビューは現代の改修、修復において価値があり、その観点からも論じて行きたい。レンヌ大学はラブルーストの隠れた作品として新鮮であり、研究の新規性も高く、論文として発表して行く予定である。 パエストゥムの神殿の復元研究の論拠となったパルテノン神殿、プロピュライア、へファイストス神殿、アフェア神殿、ポセイドン神殿についてもナオスに入ることができたので、その詳細についても報告を行いたい。イタリアの建築に関しては、今回現地調査を行ったローマとその周辺、ウンブリア地方、トスカーナ地方、アドリア海沿岸の都市の建築について、ラブルーストのデッサンとの比較研究を行う予定である。全体を通じて、構造と建造の観点から分析と考察を行い、イタリアの歴史的な建築における細い独立柱の空間と水平力の分離との関係性を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大のため、3月の海外の研究活動を控えることにした。これまでの海外現地調査では予想を超える多くの資料が得られ、次年度はこれをさらに丹念に読み解き、精緻に纏めるために予算を使用したい。パリ国立図書館、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、レンヌ大学に関する図版写真資料、パルテノン、プロピュライア、へファイストス神殿、アフェア神殿では石造天井とエンタブラチュアなどの石積みに関する資料、イタリアではエトルリア時代の地下墳墓の壁画や都市門、初期キリスト教、ロマネスクの聖堂とクリプタ、ルネサンス期のキオストロなどについての資料を纏めて行きたいと考えている。
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Research Products
(2 results)