2017 Fiscal Year Research-status Report
膨潤性マイカ複合セラミックスの自己修復能とイオン交換による強化
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17K06790
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樽田 誠一 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00217209)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非膨潤マイカ / ナノシート / 分散性 / 複合体 / 緻密化 / 微構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
①膨潤性マイカの溶融法による調製とナノシート化 膨潤性マイカとして、次の4種類のマイカを調製した。Naフッ素金雲母(NaMg3AlSi3O10F2:NFF),Naフッ素テニオライト(NaMg2LiSi4O10F2:NFT),Naフッ素四ケイ素マイカ(NaMg2.5Si4O10F2:NFS),Caフッ素金雲母(Ca0.5Mg3AlSi3O10F2:CFF);これらの中で、NFSはリヒテライト等の共生物がわずかに生成したが、他のマイカはほぼ単一相として得られた。また、NFF,NFTおよびNFSは水中での分散性が良好で、薄片化しナノシート化が可能であることがわかった。特に、NFFは分級することで平均粒径150nmのナノシート結晶が得られた。一方、CFFは水中で分散性の良好なものが得られなかった。 ②膨潤性マイカ/ジルコニア複合体の作製 上記非膨潤性マイカについて、それぞれ0~30wt%を安定化ジルコニア粉末へ添加し、複合体を作製した。その結果、緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体が得られたのは、NFF/ジルコニア複合体のみであった。その他の膨潤性マイカについては、ジルコニアが緻密化する前に分解し、ジルコニアと反応してジルコンを生成し、緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体は得られなかった。しかし、いずれも膨潤性マイカを添加することで、複合体はジルコニア単体よりも200-250℃低い温度で緻密化することがわかった。特に,CFFを添加すると1050℃の低温で相対密度100%にまで緻密化した。膨潤性マイカ/ジルコニア複合体として得られたNFF/ジルコニア複合体は、1100℃で相対密度98%にまで緻密化し、複合体中には1μm以下のNFFが均一に分散していた。この複合体は、水中に1ヶ月間浸漬しても崩壊することはなく、20wt%以上NFFを含む複合体は機械加工性を有することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、水中に浸漬しても崩壊しない緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体を作製することであった。本年度、溶融法で合成したNaフッ素金雲母(NaMg3AlSi3O10F2:NFF)を安定化ジルコニアに10-30wt%添加し、混合,成形,焼成して作製した複合体は、1100℃焼成で相対密度98%にまで緻密化し、水中に1ヶ月間浸漬しても崩壊することはなかった。このように得られた結果は、本年度の目標を達成できた。また、得られた緻密な複合体中には1μm以下の微細なNFFが均一に分散しており、高い機械的強度が期待される。 また、今回用いた4種類の膨潤性マイカ(Naフッ素金雲母(NaMg3AlSi3O10F2:NFF),Naフッ素テニオライト(NaMg2LiSi4O10F2:NFT),Naフッ素四ケイ素マイカ(NaMg2.5Si4O10F2:NFS),Caフッ素金雲母(Ca0.5Mg3AlSi3O10F2:CFF))を添加することで、複合体はジルコニア単体よりも200-250℃低い温度で緻密化することがわかった。この理由はまだ不明であるが、ジルコニアセラミックスの低温焼結につながる成果と考えられる。 NFTおよびNFSの複合化については、1100℃以上になると、NFTおよびNFSが分解し、ジルコニアと反応してジルコンを生成するため、緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体が得られなかった。したがって、これらについては、1050℃以下で複合体を緻密化させることが、緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体を得ることにつながるといえる。これに対し、ジルコニアを低温焼結させることが、一つのアプローチであると考えられた。NFTおよびNFSは、NFFよりも膨潤能が高いため、それらを複合化できれば、大きな膨潤能により、期待している自己修復能やイオン交換に大きな効果をもたらすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、目標としていた緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体の作製が達成できたので、当初の計画通り、以下のように研究を推進する。 ①膨潤性マイカ/ジルコニア複合体の作製と焼結挙動の検討:平成30年度は、より膨潤能の大きなリチウムマイカ系の膨潤性マイカを安定化ジルコニアへ複合化し、緻密な膨潤性マイカ/ジルコニア複合体の作製を試みる。また、ナトリウムマイカ系で膨潤能が大きなNFTおよびNFSの複合化については、ジルコニアを低温焼結させることで、緻密な複合体の実現につなげる。さらに、ジルコニアに替えて、1000℃程度で緻密化する水酸化アパタイトへナトリウムマイカ系の膨潤性マイカの複合化を試みる。これが実現できれば、自己修復能を有する人工骨につながると考えられる。これらについては、ナノシート状の膨潤性マイカが均一分散した微細構造を有し、水中でも自己崩壊しない緻密な複合体の作製を目標とする。 ②膨潤性マイカ/ジルコニア複合体の自己修復能と機械的性質 ・複合体の自己修復能の評価:平成29年度に得られた緻密な複合体にビッカース圧子で圧痕を導入し、その後、複合体を水中へ浸漬して、圧痕の変化を観察する。特に、多量の膨潤性マイカを添加した複合体には、亀裂周囲に多くのマイカが存在することで、自己修復が現れると考えられる。マイカの膨潤により亀裂が消滅あるいは縮小した場合、曲げ強度を測定し、自己修復の効果を評価する。 ・複合体の機械的性質と微構造との関系の検討:これも平成29年度に得られた緻密な複合体の微構造と曲げ強度・破壊靭性との関連を検討する。マイカをナノシート化することで、強度低下が抑制されるとともに、マイカがジルコニアを包み込むように折れ曲がれば、大きな高靭化が期待できる。より低温で複合体が緻密化して、ジルコニア粒子が微細であるほど、この折れ曲がりは多くなり、複合体の高靭化に効果的と考えられる。
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