2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代鉄系酸化物磁石開拓のための汎用強磁性核共鳴法実証機の開発
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17K06793
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 裕之 京都大学, 工学研究科, 教授 (00202218)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強磁性核共鳴 / 無同調NMR / 磁性材料 / 周波数高速可変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を含む一連の研究の最終的な到達目標は,鉄やコバルト,マンガン等の強磁性遷移金属元素を含む磁性材料の研究開発を加速するために,汎用的な微視的磁性測定法としての周波数高速可変型無同調NMR装置を開発することである.平成29年度は周波数高速可変型無同調NMRスペクトロメータ実証機の開発に至る中継点として,(1) 暫定的なスペックを想定した従来品スペクトロメータ本体のハードウェア設計,(2) 現有既製品スペクトロメータを用いた測定手順変更のみでの全自動測定,および(3) プローブヘッドの作製・改良,を行った.本年度の主要な目標は (1) のハードウェア設計・制作であるが,これに関してはメーカー(株式会社サムウェイ)側の事情もあり不確定要素があったが,予定通りのスペックで完了した.平成30年度以降は,そのユニットを組み込んだシステムに対して,ソフトウェアの開発を行い,暫定機の立ち上げを行う.(1) の具体的な内容は,送受信機内の一部のコンポーネント(アナログおよびデジタルコントロール部)の置き換えおよび増設であり,インターフェースを現行のUSB2.0とは別により高速のUSB3.0を加え,それに合わせてデータの吐き出し方式を変更したこと,および RF信号を外部から入力できるようにしたこと,である.(2),(3) に関しては,期間中継続的に行った.測定の対照は,我々が研究対象にしている永久磁石母材のM型フェライトの57Fe核NMRである.得られた結果は折に触れ学会や研究会等で公表し,磁性材料開発分野での無同調NMRの有用性をアピールした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主要な目標であった新設計のスペクトロメータ本体の送受信ユニットの制作が予定通り終了したため,概ね順調に推移していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に開発したハードウェアを組み込んだシステムの計測ソフトウェアを開発する.周波数高速可変型無同調測定は,従来法と異なり,測定と並列した演算の負担が大きくなるため,専用のソフト開発が重要になる.従来法の流用ではない独自のソフトウェアを開発する予定である. また,測定手順の効率化や物理的原理に根ざした測定法の改善のため,諸外国で類似の装置を運用している研究グループからの情報収集も合わせて行う予定である.
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Causes of Carryover |
申請時にはNMRスペクトロメータ本体の一部となる送受信機ユニットを新たな設計して特注する予定であった.しかし,前年度の別予算で市販送受信機ユニットを構成するコンポーネント類を購入することができたため,それらと組合せ,内部回路を改造(一部のコンポーネントの置き換えおよび増設)することで目的を達成した.そのため予定より支出が抑制できた.H30年度以降も,パフォーマンス向上のため追加の改造を引き続き行う可能性があるため,次年度使用額は主にハードウェア改造費,実験に要する寒剤等消耗品費,および調査旅費に充当する予定である.
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