2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of super multilayer oxide films with ruitle structure by spinodal decomposition toward high power solar cell
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17K06794
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村岡 祐治 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (10323635)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピノーダル分解 / 多層膜 / ルチル型酸化物 / 二酸化バナジウム薄膜 / 放射光光電子分光 / 電子構造 / フェルミ面 |
Outline of Annual Research Achievements |
・スピノーダル分解を用いたTiO2-VO2系多層膜の作製 [001]方向への異方的スピノーダル分解を活用して、TiO2-VO2系多層構造膜の作製に成功した。TiO2/Al2O3基板上にエピタキシャル成長したTi0.4V0.6O2固溶体膜を400℃でアニールした結果、Ti-rich相とV-rich相がナノスケールで交互に積層した多層構造を得た。(001)配向膜では積層方向が基板表面に対して垂直に、(101)配向膜では斜めになっていることをTEMで観察した。また、これらの膜ではバルクに比べて、ルチル型構造の面内格子(a軸長)が伸ばされていること、相分離による析出相の組成差が小さくなっていることを明らかにした。これらの結果から膜とバルクでは相図が異なっていることを指摘した。
・TiO2(001)基板上に成長したVO2薄膜における金属相フェルミ面形状 VO2薄膜金属相のフェルミ面観測に成功した。TiO2(001)基板上に成長したVO2薄膜と放射光角度分解光電子分光を組み合わせた実験により、VO2金属相のフェルミ面の観測に初めて成功した。スペクトル解析よりフェルミ波数を求め、これよりフェルミ面形状を決定した。その形状には平坦な部分が含まれており、ネスティングベクトルが存在することを明らかにした。これより、VO2の金属絶縁体転移に電荷密度波の形成が寄与していることを強く証拠付けた。本結果は、40年前に理論予想された電子構造の妥当性を直接実験で検証した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TiO2-VO2系多層膜の作製やVO2の金属絶縁体転移(MIT)に関する知見を得ることは、超多層膜の機能を考える上で欠かせない。現在までに、(001)および(101)配向のTiO2-VO2系膜において、スピノーダル分解による多層構造形成に成功している。作製のポイントは、格子形状であった。スピノーダル分解の発生は a 軸長の変化には鈍感だが、分解方向である c 軸の長さには強く左右される。分解発生には基板から受ける c 軸長への影響をできるだけ小さくすることが肝要である。このことは(100)配向膜での多層膜作製に重要な示唆を与える。なぜなら、(100)膜ではその c 軸を界面で基板と合わせて成長するためである。スピノーダル分解の発生には、c 軸歪緩和のために、緩衝層や固溶体組成の最適化などが必要である。多層構造膜は得られたが、構成層であるTi-richとV-richの組成はバルクの場合と異なった。格子変形の影響が現れている。このことは膜とバルクでは相図が違うことを示している。析出相の組成は機能、特にVO2のMITを考える上で重要である。膜での相図作成を意識しながら多層構造膜を作ることが望まれる。 一方、VO2のMITの起源に関する情報は、多層膜での機能発現を理解する上で有益である。超多層膜で出現するMITの起源はV-rich相である。この相の中で電荷密度波の形成されている。電荷密度波がMITの起源であるなら、V-rich相の厚さによってMITの出現が左右されうる。このことは、スピノーダル分解の周期を制御することでMITの出現を制御できる可能性と示唆している。 これらの結果は、スピノーダル分解を利用したTiO2-VO2系超多層膜の作製と機能発現に関する研究を着実に進め、かつ、強く方向づけもしている。研究は概ね順調に進展している判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終の3年目にむけて課題は3つある。 1つ目は(100)配向膜の多層構造膜に関するもので、論文の作成と多層膜の実現である。(100)膜では c 軸長を固定すると相分離は起きず、むしろ基板と固溶する傾向になる。この結果を論文にまとめる。多層膜の作製では、c 軸歪の緩和に取り組む。実験として、固溶体の組成を調節する、あるいは、ファンデルワールスエピタキシーを活用する、などを予定している。前者では、よりVの多い組成を、後者ではマイカ基板の使用を考えている。 2つ目は多層膜での機能発現である。相分離によるMITの発現や周期や組成によるMIT出現の制御を考えている。また、多層膜/TiO2:Nb界面での光起電力効果も調べる。効果について、固溶体と多層膜による違い、固溶体の組成による違い、多層膜の周期による違い、膜の配向方向(界面数)による違い、などを調べ、高出力化太陽電池の実現を目指す。 3つ目は[001]方向へスピノーダル分解が起きるルチル型酸化物系の開発である。これまでTiO2-RuO2系に着目して研究を進めてきた。この系はスピノーダル分解が等方的に起きる。異方的分解への移行を目指して、エピタキシャル格子整合を活用してきた。固溶体時点では面内格子の固定はできるが、アニールすると多層構造膜は形成されず、バルク同様に等方的に分解した。面内格子の束縛力を強化する必要がある。そこで、膜厚を薄くする、表面にキャップ層を付加するなどの対策により、面内格子の束縛力を強める。低温でアニールしてRuO2の拡散を抑えることも実施する。この系での異方的スピノーダル分解を実現し、その方策としてのエピタキシャル格子整合、つまり、格子マッチングと拡散制御の有用性を示す。 計画を綿密にして、着実に研究を進めることにより、目標である超多層膜の作製と高出力太陽電池を実現する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Determination of the local structure of Sr2-xMxIrO4 (M = K, La) as a function of doping and temperature2018
Author(s)
Kensei Terashima, Eugenio Paris, Eduardo Salas-Colera, Laura Simonelli, Boby Joseph, Takanori Wakita, Kazumasa Horigane, Masanori Fujii, Kaya Kobayashi, Rie Horie, Jun Akimitsu, Yuji Muraoka, Takayoshi Yokoya and Naurang Lal Saini
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Journal Title
Phys.Chem.Chem.Phys.
Volume: 20
Pages: 23783-23788
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Temperature-dependent local structure and superconductivity of BaPd2As2 and SrPd2As22018
Author(s)
Kensei Terashima, Eugenio Paris, Eduardo Salas-Colera, Laura Simonelli, Boby Joseph, Takanori Wakita, Kazumasa Horigane, Masanori Fujii, Kaya Kobayashi, Rie Horie, Jun Akimitsu, Yuji Muraoka, Takayoshi Yokoya and Naurang Lal Saini
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 98
Pages: 094525
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Origins of thermal spin depolarization in half-metallic ferromagnet CrO22018
Author(s)
Hirokazu Fujiwara, Kensei Terashima, Masanori Sunagawa, Yuko Yano, Takanobu Nagayama, Tetsushi Fukura, Fumiya Yoshii, Yuka Matsuura, Makoto Ogata, Takanori Wakita, Koichiro Yaji, Ayumi Harasawa, Kenta Kuroda, Shik Shin, K. Horiba, H. Kumigashira, Yuji Muraoka and Takayoshi Yokoya
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Journal Title
Phys. Rev. Lett.
Volume: 121
Pages: 257201
DOI
Peer Reviewed
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