2017 Fiscal Year Research-status Report
フルオロカーボン凝縮層のプラズマ励起によるフッ素樹脂薄膜の低温合成
Project/Area Number |
17K06816
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 哲也 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60252011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アモルファスカーボン / PTFE / 撥水 / 極低温 / 電子励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、フッ素含有温室効果ガスを用いて、室温以下の低温下でフッ素樹脂薄膜に変換(リサイクル)し、撥水加工など付加価値の高い表面処理に同時に利用するためのプロセスに関する基礎的な知見を得ることを目的としている。フッ素含有温室効果ガス(F-GHG)の分子氷(凝縮固体薄膜)に低速電子線や希ガスの準安定励起種を照射することにより、フッ素含有アモルファスカーボン(a-C:F)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を合成した。 初年度は本薄膜合成法を撥水性に優れた表面加工に応用することを目的とし、a-C:Fの表面形状や化学結合状態と水の接触角との相関について調査した。環状-C4F8を試料ガスとして用い、ヘリウムの直流放電プラズマで生成した低速電子と、準安定励起種(He*)をSi基板上に照射しながら成膜した。試料ガス流量および基板温度を変えて薄膜を合成し、物性を評価した。成膜初期においては基材とフッ素樹脂の間には炭素リッチな中間層(傾斜材料)が比較的均一に形成され、基材と高い密着性を有することがXPS測定結果から明らかになった。膜厚が厚くなるにつれ、樹状突起を有する薄膜が成長し、水の接触角測定から超撥水性を発現することがわかった。X線光電子分光スペクトルから薄膜はフッ素と炭素の組成比(F/C比)は約2程度を示す-CF2が支配的であり、PTFEが形成され易い諸条件を見出した。この突起状PTFEの成長は基板温度がある程度高い場合に顕著であること、照射する電子と試料ガスの各々のフラックスのバランスに依存することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、CHF3を用いて高品質フッ素含有ポリエチレンの合成を試みた。この試料ガスを用いた場合、成膜レートが小さく諸条件を変えても、カーボンリッチなa-C:Fの物性に大差は見られなかった。諸条件を変えて合成し、物性評価するのに時間を要したため、当初計画していた試料ガス種は2種類に留まった。一方、試料ガスに環状ーC4F8を用いた場合、堆積レートが大きく、化学結合状態や形状、化学的特性は大きく変化することが分かった。薄膜は微細な突起状構造を有したため種々の形状観察等が必要になり、測定箇所も多数に及んだことから計測に費やす時間が大幅に要することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
極低温基板へ蒸着する試料ガスのフラックスに応じて、DC放電生起低速電子のフラックスや衝突エネルギー、照射時間を変えて製膜する。放電ガスとしてはHeやArの希ガスと、排気ガスのキャリアガスのとして用いられている窒素を用いる。F/C比の異なる種々のF-GHG(CF4, C2F6, C3F8, C2F4, c-C4F8)、および液体PFC(C6F14)を気化して、アセチレン、エチレン、ベンゼンなどの不飽和炭化水素と混合し、フッ素含有ポリエチレンの合成を試みる。直流放電の他、マイクロ波放電、RF放電の場合についても同様に行う。
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Causes of Carryover |
当初計画で計上していた、設備備品費、消耗品費、分析経費が減額になった。設備備品は代替中古品の利用により経費節約できた。試料ガスについてはDC放電方式で予想以上に効率的なポリマーが合成されたため、ガス使用量が少なくて済んだ。形状の観察・評価に時間を要し、使用する試料ガス種が限られ、薄膜の合成回数が少なくなっことも要因の一つである。その場実・時間観察装置(フーリエ変換赤外分光高度計:FT-IR))の不具合も重なり、進捗が遅れた。初年度の未消化分は、これら計測系の改良やプラズマ生成装置の改良に充てたい。
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