2017 Fiscal Year Research-status Report
Solid-State Synthesis of Mg2Si Fine Powder from Waste Silicon
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17K06845
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐藤 正志 東海大学, 工学部, 教授 (20459449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マグネシウム / シリサイド / 水素 / 低温合成 / 熱電変換 / リチウムイオン二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体シリコン産業において大量に廃棄されているシリコンスラッジの再利用法として、Liイオン2次電池の負極材料や熱電変換半導体材料として注目されているMg2Si粒子に着目し、環境や経済的負荷の低減に繋がる有効利用方法を提示することを目的としている。 平成29年度は、シリコンスラッジを原料としたMg2Siの合成について、つぎの2通りのアプローチで研究を行う予定であった。
1. シリコンスラッジ表面の酸化層がMg2Si合成条件に与える影響: 本研究の技術的課題の一つは、シリコンスラッジから得られるSi表面層に存在するSiO2である。絶縁層であることから、MgとSiとの間の電子交換を阻害し、Mg2Siを化学合成するための大きな障害である。本年度は、エリンガムの原理に従い、金属Caを用いた乾式法によってSi表面の酸化物層を除去し、Mgとの混合物を623Kに曝したところ、単相のMg2Siを得ることが出来た。これは、従来の溶解法において必要であった1358Kと比較して圧倒的低温下で合成可能である水素を介在させた合成法においても、水素がSi表面の酸化物層除去に寄与しているものとして考えることができ、その合成メカニズムを明らかにすることが出来た。
2. シリコンスラッジに含まれる不純物がMg2Si合成条件に与える影響: 廃棄Siには、その工程由来の不純金属または有機物が混入しており、これらの不純物がMg2Si形成反応にどのような影響を与えるかについては知見がない。本年度は、その影響について検討を行い、微量な金属不純物がMg2Si形成反応に大きな影響を与えることはなく、また不純有機物については、アセトンによる超音波洗浄を経れば、Mg2Siの形成反応に影響を与えないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した通り、本研究課題の初年度の進捗は、おおむね順調に進展している。特に、廃棄シリコンの表面に存在する酸化物層がどのようにMg2Siの低温形成反応に影響しているのかを検討することによって、これまで明らかとなっていなかった、水素を介在させた圧倒的低温下で進行するMg2Si合成反応の反応メカニズムが明らかになったことは、本年度の大きな成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
実用的な材料としてMg2Siを供給することを視野に入れると、一定の粒子サイズと粒度分布をもつものが好適であると考えられる。本研究責任者による先行研究から、申請技術で得られるMg2Si粒子の粒径は原料Siの粒径に依存する事が分かっている。シリコンスラッジから得られるSiの粒径は0.1~10μm程度と想定され、合成反応で直接Mg2Siに変換されるとすると、密度計算から0.15~16μm程度のMg2Si微粒子が得られるものと考えられることから、生成するMg2Si微粒子は、原料Si粒子と比べ50 %程度大きくなると想定され、従って粒度分布も全体として粒径が増加する方向にシフトすると予想される。本課題ではその知見を更に発展させるために、シリコンスラッジから得られるSiの粒度分布と、本技術で得られるMg2Si微粉末の粒度分布の相関を明らかにする。具体的には、シリコンスラッジから得られたSiの粒度分布を明らかにした後、それらを3ランク程度に分級したSiを原料としてMg2Siを合成する。得られたMg2Si粒子は、再び粒度分布を測定し、原料Siと合成されたMg2Siとの粒度分布の相関を明らかとする。 制御された粒度分布を持つMg2Si微粒子は、マグネシウムやアルミニウム合金をベースとする高剛性軽金属基複合材料のフィラーとして用いることも提案されており、フィラー原料として要求されるMg2Siを供給できるか否かの判定にも寄与できると考えられる。
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Causes of Carryover |
当該未使用額については、物品費および消耗品として計上した真空部品類の為替変動に起因する価格差によって発生した。 次年度に予定している真空消耗品等においても、価格変動が懸念されるため、前年度未使用額を適宜割り当てながら遅延のない研究遂行に活用する予定である。
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