2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06864
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10347528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八重 真治 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00239716)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | めっき / 水素 / 空孔 / 拡散 / 昇温脱離スペクトル / 透過電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、項目(1)で引き続き塩化物浴からのPtおよびPdめっき膜について電析条件を系統的に変化させてEQCMによる電気化学測定とTDSによる水素分析を行って水素共析の機構と膜中水素の存在状態を解析した。析出電位が負になるほどPt析出の電流効率は低下し、膜中水素量が増加する傾向が得られた。GDOESとSIMSによる膜厚方向の水素分析の結果、Pt膜/Au基板界面で水素量が多くなっていることが分かった。Pd膜でも析出電位が負になるほど電流効率が低下し、電解チャージと同様に格子間にトラップされる水素の量が増加した。高水素濃度のPtおよびPd膜では格子収縮が観察され、空孔‐水素クラスターの形成が示唆された。高静水圧下のNi電析では三電極セルを用いて電気化学測定を行い、高圧下で水素発生電位は負に移行するが、Niの析出電位はほとんど変化しないことが分かった。高温TDS測定でPd膜中には1100 Kよりも高温で脱離する水素が多量に含まれていることが分かった。 項目(2)では、無電解Ni-P/Pd/Auめっき膜の積層化による膜中水素量の変化とはんだ接合性への水素の影響を調べた。その結果、析出直後のNi-P膜中に含まれる多量の水素の脱離がAu膜によって抑制され、それによってNi-P/Au膜上のはんだ濡れ性が向上することが分かった。一方、Ni-P/Pd/Au膜では、Pdめっきの間にNi-P膜中の水素はほとんど脱離したが、はんだ濡れ性はPd膜の存在によって低下しなかった。 項目(3)では、Fe-C合金電析膜の水素脆化を評価する予定であったが、微量の炭素添加によって水素濃度が急激に増加し、膜質が非常に脆くなったため引張試験片を作製することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目(1)では、PtおよびPdめっきについて析出電位による水素発生量と膜中に共析する水素の量と存在状態の変化が観察され、これらの関係を計画通りに解析することができた。また、この検討において、電解チャージによって高水素濃度(x > 1)のPdHxが得られる可能性を見出すことができた。高静水圧下のNi電析では、水素発生電位とNi析出の電位への圧力の影響を計画通りに観察することができた。低温および高温TDS測定は1台の装置でユニットを切り替えて行うため、装置の不具合が生じたこともあって今年度は高温TDS測定しか実施できなかったが、無電解Pdめっき膜中に1100 Kよりも高温で脱離する多量の水素が含まれている事が新たに分かった。 項目(2)では、無電解Ni-P/Auめっき膜においてAu膜の水素脱離抑制効果と、それによってNi-P膜中に保持された多量の水素がはんだ濡れ性を向上させる効果があることを明らかにし、新たな知見を得ることができた。 項目(3)については、電析条件を変えてもFe-C合金電析膜の非常に脆い膜質を改善することができず、引張試験片の作製が困難であったため、止むを得ず検討を中止した。 以上のように実施できなかった検討項目もあるが、それ以外は計画通りに研究を実施して新たな知見が得られたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、項目(1)でPtとPd電析膜について、共析した多量の水素が膜の構造に及ぼす影響を調べる。高静水圧下のNi電析については、水素発生用電極を追加した四電極セルを作製し、高圧下で電解により水素発生を行って電解液中に水素分子を飽和濃度まで溶解させることを試みる。その後、Ni電析を行って水素共析への水素分子の化学ポテンシャルの影響を検討する。Pd、Cu、Ag、AuおよびNi等のめっき膜について高温TDS測定を行って膜中水素を全定量し、TEMによるボイド観察の結果からボイド中の水素分子の圧力を計算する。 項目(2)では、無電解Ni-P/Pd/Auめっき膜上のはんだ接合への水素の影響をより明確にするため、電解チャージによって水素を導入してはんだ接合性を評価する。Ni-P/Au膜およびNi-P/Pd/Au膜とはんだとの接合界面の構造をSEMとTEMによって観察し、組成分析を行ってはんだ接合強度との関係を考察する。 項目(3)では、Fe-C合金電析膜を用いた水素脆化の機構解明につて検討を行わない代わりに、項目(1)において電解チャージによって高水素濃度(x > 1)のPdHxが得られることが示唆されたため、PdHxの作製条件の検討と構造解析および物性評価を行う。X線回折の他に中性子回折と核磁気共鳴(NMR)測定を行って、PdHx中の水素の存在状態を解析する。PdHxの超伝導特性を測定して水素の存在状態との関係を考察する。
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Causes of Carryover |
当初は平成29年度に卓上型高温管状真空雰囲気炉を備品として購入する予定であったが、昇温脱離分析(TDS)装置と高圧めっき装置の修理と改良に多額の費用を要したため、これを購入することができなかった。従って、平成30年度交付額で卓上型高温管状真空雰囲気炉を購入したところ、消耗品費と旅費として使用できる残額が少なくなってしまったため、若干の次年度使用額が生じてしまった。次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて、めっき用試薬、TDS分析、元素分析および電子顕微鏡関連の消耗品費、学会発表の旅費および英文添削等の人件費・謝金に使用する。
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