2018 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of protonated hydrogel and its application to novel reaction separation process
Project/Area Number |
17K06892
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
後藤 健彦 広島大学, 工学研究科, 助教 (10274127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯澤 孝司 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60130902) [Withdrawn]
中井 智司 広島大学, 工学研究科, 教授 (80313295)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / レアメタル / 金属塩形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、第3級アミンを持つ高分子ゲルを用いてアミノ基がプロトン化する際に発生する水酸化物イオンを利用して金属イオンをゲル中に水酸化物として回収する方法を検討したが、水酸化物だけでは沈殿特性が類似した金属イオンが多く、金属イオン混合溶液からの選択性に限界があった。そこで、さらに第3級アミンを持つ高分子ゲル以外に、側鎖に第4級アミンを持つ (3-Acrylamidopropyl) trimethylammonium chloride (APTAC)からゲルを合成し、プロトン化したアミノ基に塩化物イオン、硫化物イオン、リン酸イオンを吸着させた。次に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、カルシウムイオンを含んだ混合溶液に、異なる陰イオンを吸着させたゲルを用いて、各金属イオンを異なる金属塩として回収する方法を検討した。ゲル合成時のモノマー濃度や反応温度を変えて各イオンの各団での回収率への影響を調べたところ、モノマー濃度や反応温度が高いほど、各段階でゲル中に形成される各種金属塩の量が増加し、リン酸カルシウムを除いてそれぞれ、85%以上回収されることが明らかになった。 次にゲルの反応場としての利用を検討するために、陽イオン性のAPTACゲルを用いて高分子ゲルのネットワークにより粒子の凝集を防いでゲル内部でナノ粒子を合成することを検討した。ゲルを所定濃度、所定温度のCu2+、S2-溶液に順に浸漬し、可視光下で光触媒活性を持つ硫化銅のナノ粒子をゲル内部で合成した。ゲル中の粒子含有率、粒子径、粒子同定をそれぞれ熱重量分析装置(TGA)、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線解析装置(XRD)により測定した。また、メチレンブルー溶液にゲルを浸漬し可視光下での分解量を測定し、触媒活性を求めた。S2-溶液の初期濃度を調整することで、結晶性の高いCuS粒子をゲル内に合成できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、混合液からの選択回収率の向上のために、ゲルに水酸化物イオン以外の陰イオンを担持し、金属を分離する方法の検討であった。側鎖に第4級アミンを持つゲルに、塩化物イオン、硫化物イオン、リン酸イオンを吸着させたゲルを合成し、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、カルシウムイオンを含んだ混合溶液に、これらのゲルを順に浸漬したところ、リン酸カルシウムを除いてそれぞれ、85%以上回収することが可能であった。 また、その他の陰イオンとして炭酸、シュウ酸を吸着させてレアメタルであるサマリウム/コバルト、ネオジム/ディスプロシウムの混合液からの選択回収を試みたところ、炭酸ゲルを用いた方が、それぞれの金属の炭酸塩としての溶解度積の差が大きくサマリウム、ネオジムの選択性が高まることが明らかになった。 以上、計画通り、様々な陰イオンを吸着させることでゲルの反応場としての応用可能性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水中の金属イオンを回収する場合、一般的には、陽イオンが吸着可能な、酸性陽イオン交換樹脂やキレート剤などに吸着させて回収する場合がほとんどである。この場合、樹脂への吸着量は、吸着等温線に従うため、外部溶液のイオン濃度が低下すると減少するため低濃度の吸着は困難である。そこで、本研究では、平成29年度、30年度に陽イオンと難溶性の塩を形成する陰イオンを塩基性の陽イオン高分子から作製した高分子ゲルに吸着させ、金属陽イオンと塩形成反応を起こさせてゲル内部に塩を析出させて回収する方法を検討した。しかし、金属イオンの中には、タングステンやクロムのように酸素と結合してタングステン酸、クロム酸のようなオキソ酸と呼ばれる陰イオンとなる金属もある。この場合、陰イオンは、陽イオン高分子に吸着するため、回収することは可能だが、この方法は陰イオン交換樹脂による吸着回収と同様にLangmuir型の吸着等温線に従うため低濃度での回収率が低下すると予想される。 そこで、今年度は、陰イオンについても陽イオン同様に、ゲル内部で、対イオンと反応して難溶性の塩を形成させる反応を検討する。具体的には、酸性および弱酸性の陰イオン性高分子に陽イオンを吸着させた高分子ゲルを作製し、この高分子ゲルを回収対象の陰イオンであるオキソ酸イオンが存在する水溶液中に浸漬することで、ゲル中であらかじめ吸着褪せた陽イオンと塩を形成させる。これまで陰イオンに関しては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法以外に有効な分離回収方法が無かったが、本検討により陰イオンに関しても、陽イオン同様高分子ゲルを用いて塩形成反応と固液分離を同時に行う、新しい分離回収方法の開発が期待できる。また、ゲルに吸着させる陽イオンの種類や、反応温度、pHを操作条件として検討することで、混合溶液からの溶解度積の差による選択的分離回収が可能になることが期待できる。
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Causes of Carryover |
計画では水溶液中の金属イオン濃度はイオンクロマトグラフィーで測定予定だったため、クロマトグラフィー用の消耗品費を計上していたが、イオンクロマトグラフィーで測定が難しい低濃度域のイオンを、学内共同施設である、誘導結合プラズマ分析装置(ICP)で測定したために、機器分析費用がかかったが、消耗品の使用量が減ったためその差額が残った。次年度は、高濃度領域はイオンクロマトグラフィーで、低濃度領域はICPで測定する計画なので、生じた残額はHPLC用の消耗品として使用する計画である。
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Research Products
(16 results)