2019 Fiscal Year Research-status Report
樹状突起内の中心体機能の検証―微小管重合核形成とマイナス端アンカー
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17K07083
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
林 謙介 上智大学, 理工学部, 教授 (50218567)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 微小管 / 中心体 / 神経細胞 / 樹状突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の発達過程においては神経細胞の樹状突起が太く長く成長することが重要である。樹状突起の形態は細胞骨格である微小管によって支えられているため、神経細胞において微小管量を増大させれば樹状突起の成長が促進されると考えられる。しかし、神経細胞の中心体が微小管を核形成しないことが知られており、どのように神経細胞では微小管が核形成されるのかは不明だった。昨年度の本研究により、神経細胞は樹状突起成長初期に、神経細胞の細胞質で一過性に大量の微小管を核形成することを見出した。これらの微小管が樹状突起の成長に必要な微小管の供給源であると考えられる。 本研究では微小管核形成を引き起こすタンパク質の一つであるCDK5RAP2に神経細胞特異的なスプライシングバリアントが存在することに着目し、このバリアントの発現と機能について調べた。 CDK5RAP2スプライシングバリアントの発現を調べると、マウスの脳と精巣に特異的に検出された。RT-qPCRによって神経細胞での発現を定量的に調べると、細胞質で微小管形成が起きる時期に一致して一過性に発現していた。このバリアントは微小管形成ドメインを持つが中心体結合ドメインを欠くタンパク質をコードすると考えられる。実際、マウス脳及び精巣から、ほぼ予想どおりの分子量のタンパク質が検出された。 更にこのバリアントの機能を調べるために、これを非神経細胞に発現させた。通常タイプのCDK5RAP2と異なりバリアントは細胞質に局在した。そして、本来は微小管形成の起こらない細胞質に多数の再形成微小管が観察された。 本研究から、神経細胞では選択的スプライシングにより細胞質局在性のCDK5RAP2バリアントが発現し、細胞質において微小管形成を引き起こしていると考えられる。細胞質での微小管形成は、細胞全体の微小管に大きな変化をもたらし、樹状突起の成長に関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経細胞の細胞質において微小管形成がおきるという昨年度の発見を発展させ、本年度はその分子メカニズムを提唱することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CDK5RAP2のスプライシングアイソフォームが神経細胞において細胞質からの微小管形成を誘導するという仮説を、さらに確かなものにするためにはいくつかの実験を加える必要がある。例えば、非神経細胞において神経細胞型のスプライシングを誘導する実験、神経細胞において非神経細胞型のスプライシングを誘導する実験などである。
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Causes of Carryover |
現有試薬(抗体)の消費ペースが遅かったため、2019年度購入予定であったものを、2020年度に購入するものである。
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