2017 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞から成熟オリゴデンドロサイトへの分化誘導法の確立と髄鞘再生治療への応用
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17K07120
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 准教授 (40534954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧嶋 邦夫 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 教授 (50531365)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドネペジル / iPS細胞 / オリゴデンドロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
脱髄疾患の治療法として、神経幹細胞やオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた細胞移植が期待されているが、髄鞘形成能を有するオリゴデンドロサイトへの分化効率が低いことが問題となっている。我々はマウス大脳皮質由来神経幹細胞のオリゴデンドロサイトへの分化能を指標とした既存薬のスクリーニングにより、アルツハイマー病治療薬として認可されているドネペジル(DNP)を同定した。本研究はiPS細胞を用いてDNPのオリゴデンドロサイトへの分化機序の解明から、DNPを応用した効率的なオリゴデンドロサイト分化誘導法を開発し、脱髄再生治療に繋げることを目的としている。本年度はマウスiPS細胞からSFEBq法にて分化誘導した神経幹細胞を用いて、DNPが神経幹細胞の分化に与える影響について検討した。その結果、DNPはオリゴデンドロサイトへの分化・成熟を顕著に促進すると同時に、アストロサイトへの分化を抑制することが分かった。神経幹細胞の分化マーカーの発現を調べたところ、DNP処理によってオリゴデンドロサイトの分化決定因子やミエリン関連遺伝子の発現亢進とアストロサイトマーカーの発現低下を認めた。また、これらの発現変動が転写段階で調節されていることをレポーターアッセイにより明らかにした。一方、他のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ガランタミン、フィゾスチグミン)では同様の効果が見られないことから、DNPに特異的な作用機序の存在が示唆された。オリゴデンドロサイト分化に関わるDNPの標的遺伝子を探索するために、マイクロアレイ解析を行ったところ、DNP処理した分化細胞では脂質代謝に関連する遺伝子群の発現亢進を認めた。また、同定した遺伝子群は主に核内受容体を介して発現することが知られていることから、DNPのオリゴデンドロサイト分化促進作用は核内受容体を介した標的遺伝子の転写制御により発揮される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリゴデンドロサイト分化におけるDNPの標的遺伝子を網羅的遺伝子発現解析により同定し、作用機序の解明につながる知見を得ることができた。DNPを応用した効率的なオリゴデンドロサイト分化誘導法の開発については、PDGF-AAやT3などの分化誘導因子とDNPを組み合わせることで、マウスiPS細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞および成熟オリゴデンドロサイトを段階的により効率的に誘導できる条件を設定できたので、これらの細胞を用いてマウスへの移植実験を進めている。一方で、ヒトiPS細胞を用いたオリゴデンドロサイト分化誘導法については、既報のプロトコールを参考にして試みたが、Olig2/Nkx2.2陽性オリゴデンドロサイト前駆細胞への分化誘導条件は確立できたものの、成熟オリゴデンドロサイトへの培養条件は現時点で最適化できていない。これらを総合して、概ね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスiPS細胞から得られた基礎的知見をヒトiPS細胞に適応し、DNPがヒトiPS細胞由来神経幹細胞やオリゴデンドロサイト前駆細胞に与える影響について検討するとともに、DNPを用いた効率的なオリゴデンドロサイト分化誘導系の確立を目指す。また、この分化誘導法により作成された細胞をモデル動物に移植しDNPの髄鞘形成に対する効果を検証する。DNPによるオリゴデンドロサイトへの分化促進作用における核内受容体の機能的な役割を明らかにするために、核内受容体のアンタゴニストやsiRNAによるノックダウンを用いて影響を調べる。
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Causes of Carryover |
繰越金が生じたのは、当初計画で見込んだよりも安価に試薬・消耗品等の購入ができたためである。繰越金は次年度の助成金と合わせて、実験動物、試薬・消耗品等の購入および成果発表のための旅費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)